久坂部羊 「介護士K」(幻冬舎文庫)
この物語に登場する介護老人ホーム「アミカル鎌田」。夜間は3人の介護士が一人で二十人の入居者の介護をする。その仕事は凄まじい。
前任者からの引継ぎ。その後夕食の準備。配膳と食事介助の後、食器の片付けと清掃、業務の記録、就寝時間が近付くと、寝間着の着替え、歯磨きと洗面の介助、排泄介助、飲水介助、おむつの交換、薬の手配、車いすからベッドへの移乗。
この仕事に入居者が協力的であったならいいが、たいていは殆どが非協力的、あるいは反抗的。
いつまでも食事を飲み込まない、むせる、嘔吐する、着替えをいやがる、トイレに行きたがらない、トイレ以外で排泄する、大声で叫ぶ、自室にあるパンや菓子でのどをつまらせる、昼夜逆転で徘徊する、ベッドから落ちる、ひっきりなしのナースコール、「お金が盗まれた」
「部屋がのぞかれている」「変なにおいがする」などと訴えてくる、発熱する、けいれんする、体がかゆい、腰が痛い、耳鳴りがする、他人の部屋に侵入する、夜這いまがいなことをする、そして多くの人が「寂しい」「辛い」「生きていてもしかたがない」「死にたい」と繰り返す。
介護施設は給与面からいっても最悪の職場環境だ。超高齢化社会なのだから、介護士の人員を増加したり、待遇も改善すべきだという意見があるが、かなり困難だ。
というのは、老人介護は何ら生産面での益を生み出さないからだ。そんなことに人材を使うなら、もっと、利益を生み出す産業やサービスに人材を投入すべきなのだから。
私たちは、人命は地球より重いとか生きるのは基本的人権などとお題目を当然のものとして社会に要求する。しかし、信念、きれいごとの裏には、膨大な矛盾が存在している。
この物語は、介護の現実問題を活写する。お題目では、抗らいきれない現実があることを厳しく問いかける。
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前任者からの引継ぎ。その後夕食の準備。配膳と食事介助の後、食器の片付けと清掃、業務の記録、就寝時間が近付くと、寝間着の着替え、歯磨きと洗面の介助、排泄介助、飲水介助、おむつの交換、薬の手配、車いすからベッドへの移乗。
この仕事に入居者が協力的であったならいいが、たいていは殆どが非協力的、あるいは反抗的。
いつまでも食事を飲み込まない、むせる、嘔吐する、着替えをいやがる、トイレに行きたがらない、トイレ以外で排泄する、大声で叫ぶ、自室にあるパンや菓子でのどをつまらせる、昼夜逆転で徘徊する、ベッドから落ちる、ひっきりなしのナースコール、「お金が盗まれた」
「部屋がのぞかれている」「変なにおいがする」などと訴えてくる、発熱する、けいれんする、体がかゆい、腰が痛い、耳鳴りがする、他人の部屋に侵入する、夜這いまがいなことをする、そして多くの人が「寂しい」「辛い」「生きていてもしかたがない」「死にたい」と繰り返す。
介護施設は給与面からいっても最悪の職場環境だ。超高齢化社会なのだから、介護士の人員を増加したり、待遇も改善すべきだという意見があるが、かなり困難だ。
というのは、老人介護は何ら生産面での益を生み出さないからだ。そんなことに人材を使うなら、もっと、利益を生み出す産業やサービスに人材を投入すべきなのだから。
私たちは、人命は地球より重いとか生きるのは基本的人権などとお題目を当然のものとして社会に要求する。しかし、信念、きれいごとの裏には、膨大な矛盾が存在している。
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| 古本読書日記 | 06:15 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑