アンソロジー 「ほっこりミステリー」(宝島社文庫)
殺人が起きない、柔らかいミステリー短編に、伊坂幸太郎、中山七里、柚月裕子、吉川英梨が挑む。それぞれの作品に、作家の個性が表れていて面白い。
柚月の「心を掬う」。
郵便局にだした手紙が届かないという苦情がいくつかくる。田所という職員が、手紙にはいっているお金を抜き出し、封筒や手紙をトイレで捨てているのではと疑われる。
それで佐方検事の指示により、田所の座席とトイレに隠しカメラを設置する。
佐方は自分あてに2万円いれて手紙をだす。2万円いれるとき紙幣番号を写真にとっておく。次の日、田所が手紙をポケットにしまい、トイレに行くところがカメラに、トイレで封筒を破るところがカメラに写っていた。
これだけでは、田所がお金を抜き取ったとは完璧にはわからない。そこで、佐方は田所の席に行き、財布の一万円札をだすよう要求する。そして自分が事前に撮っていた札の紙幣番号と田所の財布の紙幣番号を照合、それが一致したので田所が犯人だと指摘する。
私はこれで物語は十分だと思うが、何と佐方は便壺にはいり、破られていた封筒の紙片を笊で掬い上げる。
集めた紙片を洗い乾かし、封筒の状態に再生する。そして封筒が佐方から佐方にだされたことを証明する。
この真相を求めるしつこさが柚月さんの特徴だと思わずにんまりした。
私たちは、自然破壊はいけない、自然は大切にと主張するが、中谷七里の作品は限界集落の現場に読者を連れてゆく。放置されている原に、町が産廃処分場を造ろうとする。建築業者がいかにも自然破壊業者として悪の象徴のように登場する。
一方自然保護を主張するグループに面白いのだがそれほど支持が集まらない。
「自然破壊反対。自然を守れ」というスローガンに業者が言う。
「こんな自然を残しても、こんな土地は全国に山ほどあり、観光地にもならない。放置しても何も生まない。処分場を造れば、働く場を提供できるし、お金も生む。」
自然保護の団体というのは、空疎なスローガンばかり。何の反論もできない。
中山らしい、痛いところをつく話だ。
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柚月の「心を掬う」。
郵便局にだした手紙が届かないという苦情がいくつかくる。田所という職員が、手紙にはいっているお金を抜き出し、封筒や手紙をトイレで捨てているのではと疑われる。
それで佐方検事の指示により、田所の座席とトイレに隠しカメラを設置する。
佐方は自分あてに2万円いれて手紙をだす。2万円いれるとき紙幣番号を写真にとっておく。次の日、田所が手紙をポケットにしまい、トイレに行くところがカメラに、トイレで封筒を破るところがカメラに写っていた。
これだけでは、田所がお金を抜き取ったとは完璧にはわからない。そこで、佐方は田所の席に行き、財布の一万円札をだすよう要求する。そして自分が事前に撮っていた札の紙幣番号と田所の財布の紙幣番号を照合、それが一致したので田所が犯人だと指摘する。
私はこれで物語は十分だと思うが、何と佐方は便壺にはいり、破られていた封筒の紙片を笊で掬い上げる。
集めた紙片を洗い乾かし、封筒の状態に再生する。そして封筒が佐方から佐方にだされたことを証明する。
この真相を求めるしつこさが柚月さんの特徴だと思わずにんまりした。
私たちは、自然破壊はいけない、自然は大切にと主張するが、中谷七里の作品は限界集落の現場に読者を連れてゆく。放置されている原に、町が産廃処分場を造ろうとする。建築業者がいかにも自然破壊業者として悪の象徴のように登場する。
一方自然保護を主張するグループに面白いのだがそれほど支持が集まらない。
「自然破壊反対。自然を守れ」というスローガンに業者が言う。
「こんな自然を残しても、こんな土地は全国に山ほどあり、観光地にもならない。放置しても何も生まない。処分場を造れば、働く場を提供できるし、お金も生む。」
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| 古本読書日記 | 06:18 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑