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村上龍    「ライン」(幻冬舎文庫)

 物語は20章から成り立っている。それぞれの章の最後に新たな人が現れ、次章では前章の最後に登場した人物についての物語になる。このようにして、最後の章まで繋がってゆく物語。現在のLINEを彷彿とさせる。

 それぞれの章に登場する人物は、今の社会で生き抜くには、閉塞感に覆われ、全く存在を否定され、はじき出されるような人ばかり。しかしはじかれ、追い出された世界は小さく狭いが、その人にとっては広く、やすらぐ世界でそこで初めて自分の存在を獲得したと感じる。

 杉野は音響機器メーカーに勤めていたが、希望退職制度に応じて会社をやめる。会社には同期入社した信頼できる友達がいた。

 その友達もやがて会社をやめ、FM放送局に再就職する。放送では恋愛の話が頻繁になされる。その恋愛という言葉を杉野と変える。すると放送が杉野にむかってくる。

 杉野のことばかり考えている人は案外杉野に縁がない人かもしれないし、でも杉野が全く無い世界を想像してみてください。それは何の楽しみも潤いも興奮もない灰色の世界です。杉野に失敗する人は大勢いると思います。

 これで杉野はかっての友達が放送を利用して自分を攻撃してくると思い込む。だから、放送局に500通も抗議の手紙を書く。しかし全く相手にされない。だから、新聞社に雑誌社にも友達について投書する。時には方須局、新聞社にもゆく。しかし変質者として排除される。

 そのうちにいつもどこでも友達が攻めてきていると思い、夜も寝ずに、外を監視続ける。
食べるパンにも飲料にも毒が含まれていると思うようになる。

 家族がやってきて精神病院にかかるように強制する。国家も社会も家族もみんな友達に支配されている。もう逃げ場が無いとおいつめられた時、ある女性に言葉をかけられる。そして彼女には友達の影響がないと感じる。だから彼女との世界で生きていこうと思う。

 次々こんな人が登場する。小さな世界では確かに生き生きしているように見える。
しかし、その世界はぞっとするほど冷たくて恐怖感ばかりが募ってくる。

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| 古本読書日記 | 06:39 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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