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井上ひさし   「野球盲導犬チビの告白」(実業之日本社文庫)

 天才大打者田中一郎。全盲なのだが、かってのプロ野球選手で、名コーチの永田の指導を得て、投手の動作、投げたボールのコース、軌道、速さを一瞬のうちに読み取り、それを見事に打ち返す技術を習得。

 しかしランナーにでた場合、次塁に走ったりする判断が困難。そこでいつも盲導犬チビがついて、田中を引っ張って走らせなければ野球ができない。

 プロ野球の入団テストを受けるが、盲目選手で犬が必要ということで巨人はテストさえ拒否する。それを今のベイスターズ、物語の当時の横浜大洋ホエールズが入団させる。

 そして、最初のデビュー戦、ホエールズは0-3で負けていたが、9回表に満塁のチャンス。そこで代打で田中は登場して巨人のエース西本から満塁ホームランを打つ。しかし九回裏に巨人に追いつかれ延長戦に。そして12回の表に大洋はまた満塁のチャンス。ここで田中はまた満塁ホームラン。一試合で2本の満塁ホームラン。空前絶後の偉業を成し遂げる。

 この田中選手とチビのコンビとそれにまつわる多くの人々との交流が、楽しい井上の筆致により描かれる。

 しかしこの物語を見事に支えているのは、井上ひさしのプロ野球についての深く広い、すこし偏屈な知識、調査内容である。

 例えば、田中の指導者永田は、プロ野球選手だったが、現在のプロ野球機構に属する選手では無い。実は、戦争直後、現在のプロ野球機構とは別のプロリーグが作られていた。このことは別の小説で読んだが、架空話かと思っていたが、それが実話だったことをこの物語で知った。永田は国民リーグ大塚アスレチックスの選手だった。

 私の幼い頃は、パリーグの西鉄ライオンズが強く、私もファンだった。この西鉄に強打者大下弘がいた。

 戦前のプロ野球は使用球はすべて再生球だった。従って反発力がなく、ホームランは殆どでず、試合数はわからないが、本塁打王は年間、6-7本打てばなれた。

 戦争が終わり、まだ再生球を使ったが、大下はこれをポン、ポンとホームラン、20本を打ち本塁打王となった。それまでは、空をみあげれば戦闘機と爆撃ばかり。

 大下が放つホームランを観衆が見上げる。そこには青い空ばかり。大下のホームランをみて人々は平和と自由をかみしめた。

 この物語、巨人の江川投手のドラフト破りが起きた年を舞台にしている。
巨人が田中に江川の球を打たせないため、秘密に公式球の縫い目108を150に変えてとんでもない変化球を放らせるように細工する。

 そういえば、その頃、巨人が公式球を細工しているとの噂があったことを思い出した。

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| 古本読書日記 | 05:56 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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