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開高健    「魚の水はおいしい」(河出文庫)

 開高が二十代後半から四十代までに執筆した食と酒のエッセイ傑作選。
「カクテル ワゴン」というエッセイが面白かった。

昔はバーテンダーの箔をつけるために、バーテンダーは日本郵船の船に乗りバーテンダーをしていたというのが常だった。しかしその船は北米航路か欧州航路かときくと、バーテンダーはそんなことは忘れたと言う。完全な法螺が殆どだった。

 ある日開高のところに食い詰めたバーテンダーが身の上相談に来た。
この男、やることなすこと上手くいかず、あちこちのバーを渡り歩いていたのだが、もう年だから、独り立ちしてバーをもちたいという。

 だけど普通のバーではうまくいかないだろうと言い、思い切って世の中にはない屋台バーをして、ゆくゆくはフランチャイズで何軒かバーを持つんだという。
ハイボールやカクテルを屋台でだすのである。これで屋台おでんの客を吸収するのだと熱く語る。

 開高もいい加減で、それは面白いと無責任なアイデアをだす。
暖簾はやめて、外国の酒瓶を針金で吊るせとか、洋酒の樽の上蓋を屋台の横腹にうちつけろとか。

 おっさんは、石焼き芋の屋台に洋酒の空瓶を何本もつるし、一升瓶に水をつめ、緑青のふいた古いシェーカーや、ひからびたチーズなど有象無象なものをのせてキャバレーの裏の暗がりに瓶をカチャカチャ音を鳴らして店をだす。

 高級な店が閉店時間になりおいだされた酔客が、いいところに目をつけたと立ち寄り結構成功した。氷が必要になると、歯のない下駄をがちゃがちゃと音をさせて、かき氷屋にゆき余った氷をもらってくる。

 しかし栄華は長くは続かなかった。まず警察が道交法違反で取り締まりをする。開高も時々、おでん屋やたこ焼き屋と一緒にがらがら屋台を引いて逃げるおっさんを見た。

 おじさんが失敗したのは、たくさんの客が一杯飲むと金を払わずにげていってしまったこと。金を払ったあとで注文の品を作るべきだった。

 そのうち客の支払った金をもって「いかくん」を買いに走る自転車操業に陥った。
熱燗やおでんは屋台でもいいが、洋酒は屋根のあるバーで味わいたいものだ。

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| 古本読書日記 | 06:04 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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