FC2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

久世光彦    「向田邦子との二十年」(ちくま文庫)

 次々名作を世に送り出した、名コンビ久世光彦と向田邦子。久世が飛行機事故で亡くなった向田との交流を綴る。

 向田が亡くなってからの、久世の向田観だけが語られるが、向田も同じように思っていただろうか首をかしげるところもあったが、向田に対する久世の情熱が迸っている。

 小林亜星が主人公になった名作「寺内貫太郎一家」。この作品のタイトル名がなかなか決まらなかった。当時は「うしろの正面だあれ」とか「何丁目何番地」とか、あたりが柔らかく、ほのぼのとしたタイトルが全盛時代だった。

 向田は台風がきてもびくともしないタイトルにしたいという。しかしその時、まだ主人公の名前は決まっていなかった。

 向田は昔からの強そうな名前にしたい。「大山巌」が彼女の頭のなかにはあった。しかしこれは実在した人だからだめだ。

 タイトルに「○○一家」とつけようと向田が言う。しかし「一家」はいかにも暴力団が連想されてまずいと久世は言う。紛糾したまま、打ち合わせは解散する。

 翌朝はやく、向田から久世に電話がある。
「今自宅近くの青山墓地にいるの。故人の名前を見ているの。いい名前があったよ。決めた.『寺内貫太郎』これに決まり。タイトルも『寺内貫太郎一家』。これで決まり。」

貫太郎。台風がきてもびくともしないし、筋が通っている。しかしどこか愛らしい名前だ。
「寺内貫太郎一家」。これは間違いなくヒットすると久世は思った。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ<



その後の久世の一言がよくない。「向田さんがこんな早起きするわけがない。墓地にいるなんて絶対嘘だ。」

 余計だ。向田は必至になって墓地で見つけたと素直に思った方が、エッセイとしては味がでるし、私は向田は墓地から「寺内貫太郎」を見つけ本当に快哉を叫びながら電話してきたと思う。

| 古本読書日記 | 06:58 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT














PREV | PAGE-SELECT | NEXT