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黒岩重吾    「西成山王ホテル」(ちくま文庫)

 会社に入って最初の赴任地が大阪だった。事務所が難波の大国町にあり、仕事がひけると難波のアルサロに皆で遊びに行った。今のキャバクラに似ているかもしれない。しかしキャバクラのようにけたたましい音楽によって騒ぐことを強要するようなところとは少し違うがやることは同じ。

 今から40年以上も前のこと。当時の店の子は、今の元気のいいギャルと違い、静かなどことなく薄幸な雰囲気の子が多かった。集団就職で九州や沖縄からやってきて、工場勤めをしたが、きっかけはさまざまだが、その工場をやめ、勤めている子が多かった。そして、その子たちの多くが兄弟姉妹の数も多く、貧乏子だくさんの家庭が殆どだった。

 時々、この物語の舞台になっている飛田にも行った。まだ遊郭の名残がある街だ。しかし売春禁止法のため、この街の多くの街娼は仕事を失った。そんな子が大阪南のアルサロに通っていた。

 この中編集の中の最後の作品「雲の香り」が印象深い。

主人公の高男は、大手商社の経理部に勤めていた。ある日友達が1か月後には金がはいるから、それまでのつなぎとして金を貸してくれと頼まれ、会社のお金を融通して渡した。
ところが金は返らない。融通がばれて。会社をクビになり、行き場を失い飛田に流れた。

 毎日日雇いの人夫をして糊口をしのいでいた。

ある日知り合った星谷老人から自分の仕事を手伝ってくれと頼まれる。仕事はもぐりの税理士のような仕事で、星谷老人がお客にしている100軒の店などの、税務手伝いで節税を指南する仕事。高男はこの仕事を引き受ける。仕事は税務申告の1月から3月は忙しいが、それ以外は、時々お客をまわり帳簿をみるだけで何もすることが無い。

 朝は好きな時間まで寝て、喫茶店に行ったり、映画に行ったり、パチンコしたり。凡人にはうらやましく見えるが、これが高男には辛い。

 飛田から難波のアルサロに通っている静江としりあう。静江はヤクザをしている夫を持っているが、夫は体を壊してずっと病院生活。高男は静江に恋し、静江も高男にひかれ二人は愛し合う、そのうち静江の夫が亡くなり、」2人は一緒に暮らす。静江はアルサロをやめ、近くの服飾店に勤める。

 高男は昼間以前勤めていた会社の前に行ったりする。だめだとわかっているが、昔の商社勤めを懐かしく思い、何とか飛田を脱出して、もっと生きがいのある仕事をして、静江を幸にしてあげたいと思う。
そして静江にそのことを言うが、辛い過去を持っている静江は「今が幸。飛田からは出たくない。」と頑なに拒否する。

 ある日、東京からあか抜けた女が来る。女は、飛田の人たちの暮らしを体験したいと高男に言う。そして定期的に飛田にやってくる。高男は静江を愛しているが、この女にもひかれる。この女についてゆけば飛田から脱出できるのではと思う。

 高男がその女と逢って、アパートに帰ってくると、静江が首をつって亡くなっていた。
高男は静江と逢うべきではなかった。幸についての思いが違いすぎた。

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