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南杏子    「サイレント ブレス」(幻冬舎文庫)

 著者の南さんは、25歳で夫の転勤に伴い、イギリスに行き、33歳で大学の医学部に入学38歳で卒業、老人医学を修め、現在終末期専門医療病院に勤める、現役のお医者さんである。そして55歳で作家デビューを果たしている。

 先日難治性ALSの患者の嘱託殺人事件が発生し話題となった。ALSは一旦患うと、筋の萎縮が進行し、治癒方法がなく、いずれ寝たきりとなり最後は死に至る病である。全く動けなくなり、あとは死が待っている状態で、医師に殺してほしいと依頼し、実行された事件である。死を待つしかない状態で、殺害を委託する。法律では違法なことなのだが、そのことがいけないことだと断じることができない、考えさせられる事件だった。

 この作品、6編の中編小説からなっているが1編を除いて、5編は余命幾ばくもない患者が、自宅での医療を選択して、主人公の女医が、訪問医療をして、終末医療を行う物語になっている。

 この物語で権藤という大学の名誉教授が、すい臓末期がんになり、自宅療養を選択、主人公が訪問医療を行う。権藤は主人公が治療をしようとするを必要なしと拒否する。
弱った主人公が上司の大河内教授に相談する。

大河内が主人公に言う。
「治療を受けないで死ぬことはいけないことなのかな?水戸君(主人公)医師には二種類いる。わかるか?」
「治療できる医師とできない医師ですか。」
「違う!死ぬ患者に関心のある医師と、そうでない医師だよ。よく考えてごらん。人は必ず死ぬ。いまの僕らには、負けを負けとおもわない医師が必要なんだ。
死ぬ患者も、愛してあげてよ。治すことしか考えない医師は、治らないと知った瞬間、その患者に関心を失う。だけど患者を放りだすわけにもいかないから、ずるずると中途半端に治療を続けて、結局、病院のベッドで苦しめるばかりになる。これって患者にとっても、家族にとっても不幸なことだよね。死ぬ患者を、最後まで愛し続ける医療をしてほしい水戸君には。」

 現在南杏子さんは終末医療現場で勤務している。南さんの経験からくる重い言葉だ。

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| 古本読書日記 | 06:20 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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