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浦賀和宏     「彼女は存在しない」(幻冬舎文庫)

 ミステリーのトリックに叙述トリックというのがある。

叙述トリックというのは、ある出来事をそれが本当に起きたことのように叙述して、読者にそれが事実として刷り込ませ、実はそれは事実ではなかったと最後に明かす方法のミステリーである。読んでいる作品が叙述トリックを駆使している作品だと知らないで読むと、まずたいてい出来事は事実であると思い読み進み、作者の手の内にはまり込む。後で読み返すと、確かに出来事は事実のように書かれているが、断定している部分はない。

 この物語には根本亜矢子という引きこもりの20歳の女性が登場する。そんな亜矢子が、時々外出し、横浜駅前で雑踏の中にたたずむ。その時は由子という女性になる。

 亜矢子は「解離性同一性障害」という障害を抱えている。「解離性同一性障害」というのは、一人の人間が複数の独立した人格を持ち、全く別の人間になって現れる人のことを言う。

 この障害は、幼少時家族から激しい虐待を経験していた場合にしばしば発生する。その虐待の記憶がまったくない人格があらわれたり、虐待の記憶が突然よみがえり、その記憶に従った人格の人間ができたりする。

それが正しい理論のように、説明があり、更にそれに重ねるように、亜矢子が幼児から小学生の頃、父親に性暴力を受けていたことを亜矢子の兄、有希が見ていたことを挿入する。これにより、読者は亜矢子が完全に「解離性同一性障害」だと思ってしまう。

 それが原因で、亜矢子はたくさんの人殺しをしたことになってしまう。

 ところが最後に近くなって、物語の様相がおかしくなる。事実かどうかわからないが、実は父親に犯されていたのは亜矢子ではなく、兄の有希で、それを見ていたのが妹の亜矢子。

しかも亜矢子を幼い頃犯していたのはおじさんだった。更にここに本当に幼い頃父に犯されていたという由子という女性が絡んでくる。由子は亜矢子の隣の家に由子は住んでいた。

 多くの女性の登場でこんがらがり、殺人を犯した犯人がわからなくなる。

 凝りに凝った叙述トリックを活用したミステリーであるが、あまりにも使いすぎに思える。

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| 古本読書日記 | 06:16 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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