fc2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

伊坂幸太郎    「ホワイト ラビット」(新潮文庫)

 伊坂は、現実を飛び越えて、妄想力、想像力を駆使して作品を作る。だから読者は常識現実を忘れて作品に向き合わないと、作品を楽しむことは難しい。

 この作品も、誘拐ビジネスを生業にしている稲葉が率いるグループでコンサルタントをしている折尾が経理事務の子と共謀して組織のお金をすべて盗み自分の口座に移し、行方をくらます。

 稲葉は組織の兎田に自分の妻綿子を誘拐して、それにより失踪した折尾をおびきだし誘拐場所まで折尾に連れてくる、そこで折尾と交換で綿子を解放する。指定した期限を超えると、綿子を殺害すると脅す。

 のっけから、自分の妻を誘拐すれば、折尾がでてくるというところがよくわからない。

 兎田は折尾の居場所などどこか全く見当がつかない。そこで、あるマンションに住む親子を誘拐して、やってきた警察に折尾の居場所を捜査してつきとめることを要求する。誘拐現場では警察の特殊部隊夏の目課長が率いるSITが対峙する。

 この物語に、オリオン星座の伝説や「レ・ミゼラブル」「古事記」が織り込められる。このあたりがいかにも伊坂独特で伊坂ワールドなのだが、このワールドに馴染むのが結構大変。

 実は、失踪した折尾は、兎田が誘拐した母子の子が通りを歩いていた時、折尾に偶然衝突、折尾はその際仰向けに転倒、後頭部を強く打ち死んでしまう。失踪した折尾は母子がマンションの部屋に運びベッドに寝かせてある。

 この状態で、綿子が拘束されている場所を突き止め、どうやって綿子を救出するか、その方法を誘拐された母子を含め、兎田や兎田に協力している窃盗グループが作戦を練る場面の描写が異常に長い。普通のサスペンスでは、首謀者がいて方法をスパっと言って物語は進行する。伊坂の場合は、いろんな人々のああでもない、こうでもないという会話があふれかえり、そこに味わいがあり。更にレ・ミゼラブルや古事記が挿入されるからややこしくなる。

 兎田が稲葉に捕まり、麻袋に入れられ、妻綿子の前にひきずりだされる。稲葉が綿子に拳銃を与え、兎田を撃てと命ずる。妻綿子が夫の兎田を撃つことなんてあり得ない。案の定綿子は振り返って稲葉を撃つ。銃弾は稲葉の太ももを貫く。

 とにかく起こることに疑問をさしはさまない。伊坂ワールドにすべて身をゆだねれば、なかなか心地よい世界がそこでは展開する。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ<

| 古本読書日記 | 07:59 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT














PREV | PAGE-SELECT | NEXT