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北野勇作    「かめくん」(河出文庫)

 日本SF大賞受賞作品。主人公のかめくんは本当のかめではなく、レプリカメと言われている模造品。レプリカメの甲羅は薄いシリコンとセラミックでできている。この中に、過去の記憶、知識を記録している。言動、行動はこの積み重ねた記録を再生したり、組み合わせて行う。

 不思議なのは、今地球は木星と戦争をしているが、その戦争が、社会に不安や恐怖を与えているのに、今戦いがどうなっているのか、ましてどうして戦争しているのか、明かされない。

 レプリカメは、戦争のために造られたと思われる。木星ははるか遠い。人間は行くことができない。しかしカメだったら、冬眠ができる。木星に到達するまで、冬眠していればOKだ。

 物語はSFのように、不思議な現象や行動の原理を説明しようということは無く、一般のカメ(人間のような)としての生活や行動を、SF的雰囲気に包んで描く、少し不条理でユーモアのある、市井の物語となっている。

 レプリカメを含むカメについての説明がある。
「カメというものは、甲羅とそれ以外の部分(この部分は甲羅を運ぶためのモジュール)に分けることができます。
 この甲羅の耐用期間は半永久的と言ってもよく、経験を重ねることによって記憶と学習を行い、その内部に世界モデルを形成します。もちろん、そのモデルは、外界とのフィードバック・ループによって常に書き換えられ拡張され、つまり、より進んだ世界モデルへと更新されてゆくのです。成長と呼んで差支えないでしょう。・・・更に、ここが今回の重要な点でありますが、例えば、甲羅以外の部分が修復不可能になっても、甲羅さえ保護されていれば、別の個体への積み替えが可能であることである。」

 このことはカメは万年生きるということを証明している。甲羅を積み替えてゆけば、半永久的に生きるのである。だからカメには死というものがなく、死にたいする恐怖もないのである。

 これも木星で戦争できる理由になっている。

 この物語では、女子学生の間に甲羅を背負って歩くというファッションが流行り出している。

 失礼な想像だが、ノーベル賞の山中教授の甲羅を背負っていけたら、自分の記憶はどうなるだろうと思うと、少し気持ちが想像にワクワクしてくる。

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| 古本読書日記 | 06:17 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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