梶山三郎 「トヨトミの野望」(小学館文庫)
著者名から面白い。多分企業小説の草分け梶山季之と、大御所の城山三郎の姓名からとったのだろう。こんな小説を実名や身分がわかるような名前で書いたら、世の中から抹殺されるかもしれない。それくらいリアルさを持って作品は書かれている。
トヨトミというのは言うまでもなく現在30兆円の売り上げ、3兆円の利益をあげる、世界最大の自動車メーカー、トヨタのことである。
トヨタというのは、尾張の田舎企業。豊田家は社長を輩出しても、その個性は消され、殆ど目立たず、ひたすら生産工程のムダを毎日のように省くことに集中して一銭、一銭を積み上げ、ひとりひとりの個性よりも集団としての秩序と効率を最優先し、ただただ会社を存続・拡大させ利益を追求する会社だと私は現役時代に思ってきた。また当時巷にはトヨタの改善システムを称賛する本が溢れていた。
物語では武田となっているが、豊田家以外の人間で社長についた奥田のことがとりあげられている。奥田は、尾張モンロー主義に固まっているトヨタを、大きく成長させるために、今までの社長のカラーを破り、中国に工場を建設したり、アメリカケンタッキー、テキサスに工場を建設、更に英国とフランスに工場を建設し、グローバル市場にうってでた。アメリカでは、工場進出をスムーズにさせるために、膨大な金をつかいロビイストをたくさん使った。
こんな派手な社長はかっていなかった。
更に、ハイブリッド車の開発に踏み切った。ダイハツや日野も子会社化した。
もし奥田の采配が無かったら、とても30兆円を売り上げる企業にはなりえなかった。
その後、奥田の息のかかった社長が2人続き、奥田はその間に豊田家脱却を目指した。
しかし豊田家の猛烈な攻撃に敗れ、現在社長は豊田家にもどされた。その経過をまるで目の前で行われているようにこの本は展開させてみせている。
この作品は単行本で講談社が出版したものだが、よく講談社はこの作品をだしたものだ。この本が出版されたとたん、名古屋の書店からこの本は一斉に消えたらしい。
面白いと思ったのは、名古屋駐在のトヨタ担当の記者安本がスクープを他社にとられ、東京本社に左遷される。安本の妻沙紀は、豊田市に生まれ育ちしかも父はトヨタの現場で働き定年を迎えていた豊田にすべて寄りかかっていた家庭、だから東京行きに難色を示した。しかし仕方なく東京についてゆく。その安本が8年ぶりに名古屋に帰ってきた。しかし、沙紀は喜ぶと思ったのに故郷に帰るのはいやだと拒否して、結局安本は単身名古屋にくる。
沙紀は生まれたのもトヨタ病院、トヨタのスポーツクラブで水泳、体操を習う。トヨタ系列の式場で結婚し、同じ系列のスーパーで買い物し、大半の人がトヨタに勤め、車がトヨタしか走っていない。死ぬときも葬式、墓地もトヨタの世話になる。初めて短大進学で名古屋にでて驚く。トヨタ以外の車が当たり前のように走っていた。
彼女は言う。「あんな息詰まる土地には生涯もどりたくない」と。
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トヨトミというのは言うまでもなく現在30兆円の売り上げ、3兆円の利益をあげる、世界最大の自動車メーカー、トヨタのことである。
トヨタというのは、尾張の田舎企業。豊田家は社長を輩出しても、その個性は消され、殆ど目立たず、ひたすら生産工程のムダを毎日のように省くことに集中して一銭、一銭を積み上げ、ひとりひとりの個性よりも集団としての秩序と効率を最優先し、ただただ会社を存続・拡大させ利益を追求する会社だと私は現役時代に思ってきた。また当時巷にはトヨタの改善システムを称賛する本が溢れていた。
物語では武田となっているが、豊田家以外の人間で社長についた奥田のことがとりあげられている。奥田は、尾張モンロー主義に固まっているトヨタを、大きく成長させるために、今までの社長のカラーを破り、中国に工場を建設したり、アメリカケンタッキー、テキサスに工場を建設、更に英国とフランスに工場を建設し、グローバル市場にうってでた。アメリカでは、工場進出をスムーズにさせるために、膨大な金をつかいロビイストをたくさん使った。
こんな派手な社長はかっていなかった。
更に、ハイブリッド車の開発に踏み切った。ダイハツや日野も子会社化した。
もし奥田の采配が無かったら、とても30兆円を売り上げる企業にはなりえなかった。
その後、奥田の息のかかった社長が2人続き、奥田はその間に豊田家脱却を目指した。
しかし豊田家の猛烈な攻撃に敗れ、現在社長は豊田家にもどされた。その経過をまるで目の前で行われているようにこの本は展開させてみせている。
この作品は単行本で講談社が出版したものだが、よく講談社はこの作品をだしたものだ。この本が出版されたとたん、名古屋の書店からこの本は一斉に消えたらしい。
面白いと思ったのは、名古屋駐在のトヨタ担当の記者安本がスクープを他社にとられ、東京本社に左遷される。安本の妻沙紀は、豊田市に生まれ育ちしかも父はトヨタの現場で働き定年を迎えていた豊田にすべて寄りかかっていた家庭、だから東京行きに難色を示した。しかし仕方なく東京についてゆく。その安本が8年ぶりに名古屋に帰ってきた。しかし、沙紀は喜ぶと思ったのに故郷に帰るのはいやだと拒否して、結局安本は単身名古屋にくる。
沙紀は生まれたのもトヨタ病院、トヨタのスポーツクラブで水泳、体操を習う。トヨタ系列の式場で結婚し、同じ系列のスーパーで買い物し、大半の人がトヨタに勤め、車がトヨタしか走っていない。死ぬときも葬式、墓地もトヨタの世話になる。初めて短大進学で名古屋にでて驚く。トヨタ以外の車が当たり前のように走っていた。
彼女は言う。「あんな息詰まる土地には生涯もどりたくない」と。
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| 古本読書日記 | 06:19 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑