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瀧羽麻子   「左京区恋月橋渡ル」(小学館文庫)

 私は大学時代を寮で生活した。築60年以上過ぎていた大変な寮だった。この物語と同じように寮は大学の敷地内にあった。不思議なことは、寮生の授業出席率寮が敷地内にあるにも関わらず、非常に悪かった。寮はバンカラ風。自治寮だった。

 この作品で、大学の寮だなあと感じた部分があった。大学院で数学を研究している龍彦は、どこにいても、数学の問題を解くことだけに集中している。だから何かヒントが浮かぶと、すぐにメモをとる。トイレで浮かべば、トイレットペイパーにメモする。そんな感じのため
寮の部屋、すべてのふすま、壁、天井数学の式が書かれている。押し入れの壁にも。

 主人公は大学院で平和な燃焼エネルギー開発研究に挑戦している山根。雨の下賀茂神社で、偶然出会った美しい女性に一目ぼれする。
 理科系で不器用な山根は生まれてから22年間、女生と付き合ったり、恋をしたことは皆無。

神社で出会った女性といつかまた会うことを約束。早速その時交換したアドレスにメールして逢う日を決める。

 しかしデートはどこで何をしたらよいか全くわからない。そこで山根は龍彦の恋人の花にデートの場所を含め恋の指南をしてもらう。それを懸命にメモして、計画表を作り、実地の下見して準備万端いよいよデートをする。

 ほほえましいと思ったのが、イタリアンレストランに入った時の山根。
「十一時三十八分に予約した山根です。」三十八分。理系一筋の様子がでている。

 しかし、この美人女性はすごい女性だった。葵祭で登場する斎王代に選ばれていた。
斎王代に選ばれる女性の審査基準は厳しい。純粋の京都人で三代以上前から続く由緒ある名家の女性でなくてはならない。しかも斎王代になると数千万円が使われる。全部が選ばれた家が負担するわけではないとは思うが一千万円以上は負担せねばならない。

 山根君。そんな女性は無理だよ。でも、偶然でもそんな女性とデートできたことはうらやましい。
 現代版「ローマの休日」というところだ。

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| 古本読書日記 | 06:19 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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