アンソロジー 「ひとなつの。真夏に読みたい五つの物語」(角川文庫)
5人の作家が紡ぐ夏をテーマにした物語集。
主人公の僕は二浪の浪人生。1年目は早稲田だけを受け失敗。2年目は予備校にも通い、早稲田はもちろん、明治、中央もうけたが全部失敗。落ち込んで、あてのない空虚な生活を送っている。そんな生活を打破しようと夏の旅行を決意する。そんなことやっているくらいなら勉強に集中しろと怒ると思っていた父も、若いうちの無銭旅行も価値があると賛成してくれた。
それで5枚セットの青春切符を1万円で購入。一枚で2日分普通電車乗り放題の切符だ。
旅行当日は朝5時起きで家をでて、熱海行きの電車に乗る。もちろん熱海で下車するわけもなく次の浜松行きに乗り換える。どこへ行こうとか何かをしようとか思って旅に出たわけでもないので、ひたすら西に向かって無気力に進む。
一日目は夜、広島に着く。することもないので、駅前のビジネスホテルに泊まる。
夜10時半にビジネスホテルにチェックインして泊まる。
翌日は平和記念公園と厳島神社に行く。特に行きたいところではない。広島定番コースだ。
部屋に帰り思う。とても自分に今より先があるとは思えない。帰るところもない。このまま彷徨いながら死んでしまうんだと。
夜、広島料理店の看板がある店に夕飯のため入る」。そこは居酒屋だった。
お腹が空いていたので、あれこれと注文する。沢山取りすぎたので、別テーブルのニッカーボッカーお客さんたちに、食べきれないほど取っちゃったんで食べてくださいと料理を持ってゆく。大歓迎をしてくれた。しらない人たちと一緒に飲む。色々話をして、お開きになったとき、グループの男の人が、「一緒にいるお姉さんを一晩貸してあげるから、男にしてもらいな」と言われる。
けばけばしいお姉さんとタクシーに乗る。
お姉さんが、あれが泊ってるホテルよと指さす。「ありがとう」と言って降りようとすると「何言ってるの。わたしも一緒よ。私安いんけ。」
僕は少し震えながら
「そんなことすると明日後悔する。絶対嫌な思いをするよ。」
お姉さんは「あんたはいい人だね」と言ってタクシーでどこかへ去ってゆく。
後悔だけが残った。
次の日は小倉まで行った。ビジネスホテルの部屋で夕日の落ちるのを見る。そして叫ぶ
「まだ死ねないなあ。」無性に家に帰りたくなった。
そして翌朝青春切符で家に帰る。
藤谷治の「ささくれ紀行」。無性に甘哀しい、青春の一幕。
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主人公の僕は二浪の浪人生。1年目は早稲田だけを受け失敗。2年目は予備校にも通い、早稲田はもちろん、明治、中央もうけたが全部失敗。落ち込んで、あてのない空虚な生活を送っている。そんな生活を打破しようと夏の旅行を決意する。そんなことやっているくらいなら勉強に集中しろと怒ると思っていた父も、若いうちの無銭旅行も価値があると賛成してくれた。
それで5枚セットの青春切符を1万円で購入。一枚で2日分普通電車乗り放題の切符だ。
旅行当日は朝5時起きで家をでて、熱海行きの電車に乗る。もちろん熱海で下車するわけもなく次の浜松行きに乗り換える。どこへ行こうとか何かをしようとか思って旅に出たわけでもないので、ひたすら西に向かって無気力に進む。
一日目は夜、広島に着く。することもないので、駅前のビジネスホテルに泊まる。
夜10時半にビジネスホテルにチェックインして泊まる。
翌日は平和記念公園と厳島神社に行く。特に行きたいところではない。広島定番コースだ。
部屋に帰り思う。とても自分に今より先があるとは思えない。帰るところもない。このまま彷徨いながら死んでしまうんだと。
夜、広島料理店の看板がある店に夕飯のため入る」。そこは居酒屋だった。
お腹が空いていたので、あれこれと注文する。沢山取りすぎたので、別テーブルのニッカーボッカーお客さんたちに、食べきれないほど取っちゃったんで食べてくださいと料理を持ってゆく。大歓迎をしてくれた。しらない人たちと一緒に飲む。色々話をして、お開きになったとき、グループの男の人が、「一緒にいるお姉さんを一晩貸してあげるから、男にしてもらいな」と言われる。
けばけばしいお姉さんとタクシーに乗る。
お姉さんが、あれが泊ってるホテルよと指さす。「ありがとう」と言って降りようとすると「何言ってるの。わたしも一緒よ。私安いんけ。」
僕は少し震えながら
「そんなことすると明日後悔する。絶対嫌な思いをするよ。」
お姉さんは「あんたはいい人だね」と言ってタクシーでどこかへ去ってゆく。
後悔だけが残った。
次の日は小倉まで行った。ビジネスホテルの部屋で夕日の落ちるのを見る。そして叫ぶ
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| 古本読書日記 | 06:22 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑