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有川浩     「海の底」(角川文庫)

 春爛漫の横須賀米軍基地、桜まつりが行われ大勢の人でにぎわっていた。そんな時、大きいものは3mにも及ぶ大型ザリガニの大群が襲ってきた。この時、米軍の港に自衛隊の潜水艦「きりしお」が停泊していた。ザリガニの襲来を逃れてきた13人の子供たちが、艦長の誘導に従い、「きりしお」に避難。艦長はその際、ザリガニに襲われ、体を食べられる。艦に残っていた夏木三尉と冬原三尉は子供たちを避難させるとともに、艦長の体で残った腕を回収し冷蔵庫に保管する。

 普通こういう物語になると、大型ザリガニと自衛隊や警察との激しい戦闘をひたすら描き、闘いのヒーローとともに救出成功をクライマックスにする感動作品になる。
 有川さんの作品は、この路線を踏襲しない。

女性作家だと思ったのは、高校女子3年生の望が、生理になり着替えやその処理に女性のための道具が無いため苦戦したり、小学生の光がおねしょをして代わりの下着やシーツが無く往生することなどを描くところ。普通の暮らしを思い浮かべてザリガニとの闘いの物語に挿入することは、有川さん以外の作家では思いつかない。全く非凡な才能であり、持っているポケットの中身が豊富だ。
 
 ザリガニなんか自衛隊が登場して、一気に襲撃して蹴散らせば問題ないと思うのだが、ザリガニが人間を攻めるなどという想定は法律にはない。

 自衛隊が国内で活躍するのは、災害派遣が殆ど。災害派遣には銃やミサイルなどの装備はできない。そこで、政府内や国会で銃装備の自衛隊を投入すべきか長い議論がなされる。

 そこでザリガニ襲来に対応していた警察隊が、ぎりぎりまで対応して、この先解決は自衛隊投入しかないという状況を演出して、やっと自衛隊投入が決断される、自衛隊が投入されると、あっけらかんと問題は解決される。強烈な皮肉だ。

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| 古本読書日記 | 05:59 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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