FC2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

柚月裕子    「合理的にあり得ない」(講談社文庫)

 弁護士だった上水流涼子は、謀略にはまり、殴打事件の犯人にされ、執行猶予付きの判決を受け、弁護士資格をはく奪される。仕方なく、頭脳明晰な貴山を弟子にして探偵エイジェンシーを立ち上げる。
 涼子、貴山コンビの探偵シリーズ5編を収録。

  山梨に本拠をおく暴力団組織関東幸甚一家の5代目現総長の日野より依頼がくる。長野に本拠を置く横山一家の現在の総長の財前と賭け将棋をやる。掛け金は今までは3千万円だったが今回はいっきにはねあがって一億円。この勝負に勝てるようにしてほしい。勝てば1千万円を報酬で払う。しかし負ければ報酬は支払わない。

 貴山は過去の2人の対戦のすべての棋譜を要求。それを徹底的に調べる。
最近はコンピューターの力量があがり、しばしば将棋名人がコンピューターと対戦して負けることが起きる。
 貴山は調査の結果、財前の将棋はコンピュターソフト「セイレンⅡ」を使っていることをつきとめる。

 対局は天童の神の湯ホテル竜昇の間。

 貴山は対局前日の隠しカメラを設置。それに壁掛け時計に細工と日野に見た目ではわからない特殊メガネを与える。カメラを通して入手する相手の指し手に対して打つ手を壁掛け時計に知らせる。その時の数字と時計が発する特殊メガネしか感知しえない色の組み合わせにより日野は指し手を知る。

 一方財前も隠しイヤホーンを使い別の隣の間にいる彼の部下に日野の指し手を伝え、部下が「セイレンⅡ」がはいっているパソコンに日野の手を入力。それにより「セイレンⅡ」が示す指し手を財前に伝える。

 形勢は財前有利に進行しているが、ある時点で貴山は特殊手を打つ。それに対し財前がある手を必ず打つ。それは完全に悪手で、その手により、財前は負けてしまうことを貴山は確信している。

 そしてとうとう日野が特殊手を打つ。5三角ならず。将棋では相手陣内に駒が入るとたいがいそれが裏返され成り上がり縦横無尽に駒が動けるようになる。ならずということは、成り上がりをしないということである。そして相手がしてくるだろう悪手が角の正面に歩を打つこと。角は成り上がらないと、まっすぐ進めず歩によって角は取られてしまう。

 そう。貴山は「セイレンⅡ」の調査により、自陣内に進んだ駒が成り上がらないケースを想定していないことを掴む。

 当然財前は打つべき手が伝えられてくるはずなのに伝えられてこない。そして長い時間を待つが待ちきれずに5二歩、角の正面に打つ。必負の悪手である。AI将棋の落とし穴をついた貴山見事!

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ



| 古本読書日記 | 06:00 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT














PREV | PAGE-SELECT | NEXT