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垣谷美雨    「ニュータウンは黄昏れて」(新潮文庫)

 私の住んでいるところは、200世帯ほどが一自治会をなし、4自治会まとまり地区連合会を構成している。

 家のある場所は、私が家を建てた20年ほど前、業者により分譲住宅地として売りにだされた。だからその当時一斉に新築された住宅地だ。多分新築されたころは、綺麗な整然とした住宅が並んだと思うが、それからほぼ50年。その面影は殆ど消えた。そして、そのころは同じ世代の人たちが新築したので、住人はそのまま年をとり完全に老人の街になった。

 自治会の会長や役員は今や殆どが80歳代。75歳くらいの人は若手と言われる。
私も輪番で自治会長をしたときは、地区の連合会長は90歳に届こうかと言う人。仕方ないので、地区の世話役を会長のかわりに務めた。

 今はマンションと呼ぶが、昔は団地。団地と言っても、3LDKが標準で4LDKもあり、賃貸でなく、新築団地として購入する人が多かった。

 物語はそんな団地が舞台。

 団地は10棟ある。建築業者は古くなった団地は取り壊し新しいマンション建設を勧める。修理では1戸あたり負担が1600万円になるが、建て替えすると負担は無いという。しかも新築マンションになると団地の価格はあがり、現在なら1600万円/戸のものが4000万円/戸にはねあがるという。

 どうしてこんなからくりが可能かと言うと、新しく建て替えたマンション10棟は高層マンションにして、新しく購入した人によってマンション建設費を賄うからだ。

 しかし、この計算が成り立つためにはマンション全戸が販売されることが前提。住人はバラ色のマンション生活を描いたり、新しい自分のマンションの住居を転売して儲けようと考え幸せ気分になる。

 さらに、高層マンションは2棟だけにして、残りの土地は販売して、その資金をマンション建設費にあてる。

 ところが最近は駅そばの立地でないと新築マンションでも売れず、空き部屋がたくさんになる。

この団地、駅までバスと立地が悪く、建て替えの建設費の見積もりを5つの業者に依頼するが、すべての業者が見積もりを断ってきて、住人の目論見は完全に外れる。
 そして住人の中心年齢も80歳以上。団地は5階建てでエレベーターも無い。ここから、現代が抱える団地問題の物語が始まる。

 面白いのは、同じ団地に住んで大人になった、小中と同級生だった友人女性たちが登場する。この仲良し3人組が、大金持ちの見た目イケメンを恋人に持つ。しかし、その恋人の性格の悪さ、ストーカーぶりにいやけがさし、恋人を振り、次々友達におしつける。そして、終わった恋の苦しさ、切なさに悩む。

 その切なさを互いに告白した後、友達の一人が別の友達に言う。
「何があってもずっと友達でいようね。」と。すると友達が言う。
「それは無理だ。人生生き方も違うし、それで新しい友達もできるのだから。」と。

殆どの小説は、「そうだね。私たちはずっと友達だね。」とセンチメンタルに答え、変わらぬ友情を確認する。
こんな答えに出会った小説は初めて。いかにも、現実は冷ややか。垣谷さんらしいと感心し驚いた。

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| 古本読書日記 | 06:23 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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