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真梨幸子    「あの女」(幻冬舎文庫)

 二十歳代で流行作家の仲間入りを果たした珠美。一方働きながら作家を続けている三十五歳の桜子は本をだしても初版どまり。おいつめられ苦しい状況。そのため珠美に嫉妬、憎悪の感情を強く抱いている。殺したいほど憎んでいる中、その願いが通じたのか、珠美はマンションの3階のベランダから転落、植物人間のようになり最後は死んでしまう。

 この作品で真梨さんは、小説を書く基盤になるものを編集者西岡を通して言う。

「欲や嫉妬や悪意や殺意を、世界は一方的に闇と一括りにして片付けてしまうけれど、この感情は万人が持っているもので、ということは、人間にとって必要な脳の働きなんですよ。
つまり、生きるというそのものの行為が欲や嫉妬や悪意や殺意に集約されるんです。一方、無欲や寛容や善意や慈悲は、むしろ社会的に作られた要素だと思うんです。なぜか。それは、人が生き延びるためなんです。人が生き延びるためには、社会が必要で、社会にはルールと秩序と宗教が必要で、人は後天的にそれを身につける必要があるんです。」

 この作品でも真梨さんは、人間の本能をむきだしにして、この基本的考えを徹底的に追及する。

 桜子は、珠美を殺してもかまわないと考える。それをベースに小説を書く。どんなにベストセラー作品を実現しても、一瞬にして作品は消え、長い年月を経て生き残る作品はごくわずか、殺人をおこしてまで作家が殺人を描けば後世まで作品は残る。

 真梨さんのすごいのは、桜子が殺人を実行していないのだが、妄想している間に、それが現実に起こったことと桜子が信じてしまうところ。作品のためには、殺人犯になることもいとわない。

 そして最後はとんでもない真相が明らかにされる。何だか真梨さんの執念を感じる。

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