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加藤千恵   「この街でわたしたちは」(幻冬舎文庫)

東京を舞台に、4組の男女が繰り広げる恋愛模様を描いた短編小説集。

出会いのきっかけは書かれていないのでわからないが、多分コンパが開かれそこに参加したとき主人公の私は颯爽とした前田さんと出会い付き合いを始めたのだろう。

 そして今、前田さんの予約した外苑前の「フロリレージュ」という高級レストランで向かい合っている。数万円/人する、とても私のような庶民が行くことができる店ではない。

 前田さんは、IT企業の経営者。ネットで調べたが何をやっている会社か全くわからない。
青山のタワーマンションに住んでいる。そこに連れていかれた。東京の夜景を独り占めしている素敵な部屋。そこで抱かれた。

 こんなありえないようなことがあってもいいのだろうか。前田さんは、私のどこが気に入っておつきあいをしてくれているのだろうか。

 住んでいる世界が違いすぎて、高級レストランで食事していても、話題が無い。いつか別れを宣言されるだろうなと震えながらのおつきあい。

 食事中会話が無く、前田さんの携帯は鳴りっぱなし。「失礼」と言って席をはずし、電話で会話をしている。忙しいのだ。

 そして、「今日は急用ができて行かれない。」と電話を受ける。そんなとき、馴染みの街下北沢にでて、普通の食堂に入りハンバーグを一人で食べる。寂しいけど、ほっとする。庶民の味だ。

 夢のようなお付き合いをしていて、とうとう別れを宣言される日が来た。北品川にある三ツ星フレンチレストラン「カンテサンス」で。

 「もう会えない」ときりだされ「とうとうその時がきた。」とそれでもがっかりする。前田さんが悲痛な声をあげる。「会社が倒産したんだ。」と。

 それから、少し期間をおいて、思い切ってわたしから食事を誘う。場所は羽田空港ターミナルにある「うどんそば」の店。

 よれよれでくたびれきった前田さんがやってくる。2人で「カレーうどん」を食べる。
前田さんが「おいしいね」と言う。続いて「それにしてもどうして羽田空港なの?」と聞く。
わたしが答える。「だって今、ここからどこへでも旅立てるじゃん。」と。

 すこしぐっとくる暖かい物語だ。

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| 古本読書日記 | 06:36 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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