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林真理子ほか  「東京小説」(日経文芸文庫)

 青山、銀座、下高井戸、深川、新宿を舞台に5人の作家が競演した作品集。
ハードボイルド、ヤクザ、マフィア小説の舞台といえば何といっても新宿。新宿はあまたの作家によって多くの作品が生み出された。

 その新宿を扱った、盛田隆二の新宿序曲のような作品。新宿は全く知らないが、少し古いかもしれないが、本格新宿小説の導入作品になっている。

 作品の初め早朝の新宿の様子が見事。
「サウナやカプセルホテルの入ったビルからスーツ姿の男たちが次々と出てくる。終電車に乗り遅れたため、タクシー代惜しんで仮眠をとった埼玉や千葉のサラリーマンだろう。駅に向かって足早に歩いてゆく。シャッターを降ろしたゲームセンターの前では、一目で家出娘とわかる少女が男にふたりがかりで口説かれて頬を紅潮させ、コマ劇場前の広場には数羽のカラスが舞い降りて生ごみをつつき、劇場の軒下では蓬髪の男が紙袋を抱えてすわりこみ、早くも並び始めた歌謡ショーの客の列をぼんやり眺めている。」

こんなところから始まり、予備校通いの伊知郎は、麻薬かわりにパブロンSの咳止めをたてつづけに4本飲む。覚せい剤のもとになっている塩酸メチルエフェドリンが器官を広げ、アヘンの成分であるリン酸ジヒロドコデインを飲むと幻覚症状を味わえる。

 それから本屋で万引きをして、立ちんぼのお姉ちゃんと遊ぶ。しかし、払うお金がない。すると優男が現れる
「私は東京の大学に留学しています。来年は大学院に進学します。だから問題をおこしたくありません。でも平気で人を殺せる子分がいます。3万円のペイで肩の骨を折ります。10万円で顔を切ります。30万円も払えば、目を潰して埼玉の山の中に埋めます。どれにしますか。」

 これを読んでからあまたの新宿小説を読めばよかった。

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