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小鷹信光    「アメリカ語を愛した男たち」(ちくま文庫)

著者の小鷹は、ハードボイルド小説の書評家であると同時にアメリカのハードボイルド作品の翻訳を多く手掛けている。ダシール・ハメットの「マルタの鷹」などを翻訳している。

 翻訳家というのは大変な仕事だ。言葉は生き物で常に変化している。その時代に生きていて、外国に暮らしているのなら、言葉の意味、雰囲気、用法を把握できるが、「マルタの鷹」のように1930年」に作品を翻訳するとなると、その時生まれた言葉もあれば、今は死語になった言葉もあるし、今と比べて意味や用法が変化したり、新たな意味が加わったりする。

 これらをすべからく調査、吸収して翻訳しないと間違った意味を読者に与えてしまう。

翻訳には幾つかの辞典や、多くの本を収集、そこから用法を調べてなされる。しかし、著者はまったくそれでは翻訳はできないと、言葉をピックアップして、それが使われている部分を収集して翻訳にあてる。膨大な量のスリップが集まる。

 本作品ではハードボイルドが固ゆで玉子から、こわもてのする、無情なにどのようにして変化していったのか。TOUGHはタフだけでは全く訳せないかを中心に多くの名小説の事例を使い提示する。

 驚くことにブタ箱を示す言葉だけでも56もある。それぞれ形態により異なる。これを「監獄」「ブタ箱」「留置場」だけの訳ではピタっとあった表現ができない。今度は日本語でどう訳すか日本語への旅が始まる。

 TOUGHは、頑固、こわもて、わからずやなどの意味が強い。

 ジョンロバートの作品に「TOUGH COP」という作品がある。主人公の警官が警官をやめるとき、バーでバーテンダーと会話する。

 そこに「自分はTOUGH COP」だったと主人公が言う場面がある。TOUGHの意味が、頑固、こわもて、したたかではピンと来ない。そして色々調査し、「まじめな」「誠実な」という意味なのだとわかる。

 主人公は自らのことを
「悪に染まらず、まがったことが嫌い、お役目ひとすじに、まっすぐへこたれず歩んできた。バカ正直でまじめなおまわり」と言っているのだ。ここがわかるまで10年の時間を要したと著者 小鷹は述懐している。

 翻訳の難しさ、奥深さをこの作品は教えてくれる。

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| 古本読書日記 | 06:47 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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