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斎藤美奈子   「吾輩はライ麦畑の青い鳥 名作うしろ読み」(中公文庫)

 名作の急所はラストにある。ということで、ラストを吟味しながら、古今東西の名作の解説をした書評集。

 斎藤さんの書評は、文学評論家や名作家と自認する一般の読者がそのレベルが届かないような評論と異なり、平易な言葉と心情あふれる評論で、かつ本当に本が大好きで、丁寧にどんな本も読んでいる態度が伝わってきてうれしい。

 この書評集で取り上げていて、以前読んだときは思わなかったのだけど、今の状況の中で」読むと、強烈な印象を受ける作品がある。

 一作目はブラッドベリの「華氏451゜」。

舞台は近未来。本は禁制品になり、読むのも所持するのも、印刷するのも一切禁止となる。見つかった場合はその場で燃やされ、違反した者は逮捕される。これは大変なことだ思い、びっくりするのだが、このことに不自由を感じたり、抵抗する者は殆ど無く、人々は無関心であるのだ。作家にとっては死活問題だから、結末は希望がもてるように変わるのだが。

 恐ろしいのは、今このようなことが起きても、同じ状態になるのではと思ってしまうところ。

 それから、誰でも知っていて教科書にも載っている芥川の「蜘蛛の糸」。

生前極悪非道の限りを尽くして地獄で苦しんでいるカンダタ。そんな極悪カンダタも蜘蛛を踏みつけるのをとどまったことが生前に あった。それを思い出した天国にいるお釈迦さま。カンダタを救ってあげようとして天国から蜘蛛の糸をたらす。カンダタはその糸にすがって昇りだすが、途中で下をみると無数の人が同じように糸にとりつき昇りだす。そして途中で糸は切れ、元の地獄に落ちてしまう。
 お釈迦様は、蓮のまわりを気まぐれに散歩していた。そしてほんの気まぐれに、蜘蛛の糸を垂らした。糸が切れる。するとお釈迦様は何もなかったようにまたぶらぶらと歩きはじめる。」
 お釈迦様はほんのからかい、遊びで糸をたらした。セレブ、最近流行の言葉でいえば「上級国民」は下層の人々など関心もないし、眼中にもないのだ。
 お釈迦様の視点から作品を読んだことがなかったので、斎藤さんのお釈迦様からみた解説はいたく印象に残った。

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| 古本読書日記 | 06:56 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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