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藤沢周平    「闇の歯車」(中公文庫)

 物語の設定と、背景の提示が実に印象的で素晴らしい。

 博打で身をもちくずし、危険な仕事をしながら、日々を送っている主人公の佐之助。その佐之助に連れ添っていたが3年前に家をでてしまった妻きえを思い出すと佐之助の心がちくりとするというところから物語が始まる。

 さらに、佐之助がいつも行く飲み屋「おかめ」。

 ここに、佐之助を含め、いつもやってくるが、誰とも交わらず、一人で酒を飲む3人の男が登場する。武士浪人の伊黒、人殺しをして島流しになり30年も放浪してきた白髪の老人弥十、それに結婚を真近に控えているのに、情婦との縁が切れないで弱り切っている若旦那仙太郎。毎日のように顔を合わせる4人が、それぞれに苦悩を抱えているのに、全く交じり合わずに、酒をひたすら飲む姿が強く印象付ける。

 そして登場するのが表向きは金貸しだが、裏稼業で押し込み泥棒稼業をしている伊兵衛。この伊兵衛が、「おかめ」のバラバラ客を束ねて、商家近江屋に押し込みで入り、お金を奪うことを計画して実行する。奪ったお金は2か月後に、伊兵衛から4人に分ける。この企みは成功したように見えたが、がたがたと崩れてゆく。

 最近は、日本にいると感じないが、やたら世界ではデモが多い。この原因は3つある。強い権力で人々を縛り付け、犯行する者は容赦なく逮捕し、場合によっては殺害する。そんな権力に対する抗議デモ。それに、多数の最下層においやられ最早くらすことが困難になった人々が起こすデモ。更に地球規模で危険が迫っていることに対しその反対の施策を続けるリーダーたちへの抗議デモ。

 リーダーたちは、完全に自分に従わない人たちは人間ではない、動物か機械のように振る舞う。

 この物語のタイトル歯車。人間はすべて歯車で当然自分の命令に忠実に従い行動するものとリーダーは考えるが、人間は思いや感情がありそれぞれ違い、現実は思い通りにはいかないということを想起させる。

 佐之助のもとから消えたきえ。実は押し込みに入った近江屋で働いていた。そこで押し込みに入った佐之助を見ている。

 しかし、目明しがきえに佐之助を見ただろうと面通しするが、きえが「こんな人知らない」ときっぱりと言うところが印象的だ。

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| 古本読書日記 | 07:19 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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