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絲山秋子     「小松とうさちゃん」(河出文庫)

 主人公の南雲咲子は、海岸から海の中に入り込む。自ら固定した足元にミズクラゲがいた。

そのミズクラゲには他の仲間と違ったところがひとつあった。お腹の部分が透明で、時々そのお腹の色が黄色から水色になったり、紫からピンクに変化をする。何かを考えるとき、かれの精神を表す波形のように思えた。

 咲子の心がミズクラゲのお腹に落ちた。すると、ミズクラゲが「こんにちは」とあいさつする。咲子も「こんにちは」と答える。

 ミズクラゲは考えたり、思ったりすることはあるが、脳を持っていないから、それが行動に移ることはない。

 クラゲの中には、無性に生殖ばかりするクラゲもいるし、光を発生したり、波に逆らって立ち向かうクラゲもいる。

 しかしミズクラゲは、まわりにいるプランクトンを食べるだけで、他に一切しない。仲間との間に隙間を作って、群れることもなく孤高としている。仲間友達なんて考えたことも無い。

 咲子は、小さい時から、他人との関わりを避けてきた。居心地の悪い学生時代を送った。
就職して事務員になったが、人と交わることができなかった。就職して3年後に求愛され男と結婚したが、3年で破綻。悲しく思ったが、ほっとした自分がいた。

 離婚後は実家に帰り、地元の会社に就職。休日は畑仕事を手伝ったり、病気がちの親を世話しながら暮らしてきた。

 そんなことをミズクラゲに話した。
すると、驚くことにミズクラゲが笑った。ミズクラゲが笑ったのは生まれて初めてのことだった。つられて咲子も笑った。
 「私たちって同じだね。」

ミズクラゲは、脳が無いから、思っても行動はおこさない。しかし咲子には脳がある。行動を起こさないのは切ないことだなとも思ってしまう。

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| 古本読書日記 | 05:54 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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