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西加奈子     「i」(ポプラ文庫)

 最近の小説では、殆ど無くなったが、世界、社会とのかかわり方、人間としてのあり方、生き方を明白に描いた作品である。

 主人公のアイは、シリアで生まれる。そこで、日本人の女性とアメリカ人の男性夫妻に養子として引き取られ育てられる。生まれたシリアでは、独裁アサドの虐殺や、内戦により数十万の人々が殺される。

 もし、養父母に偶然に拾われなかったら、自分も犠牲になっていたかもしれない。それなのに、自分は裕福な生活が送れている。そこに、強い引け目とこの世に存在していいのかという思いが強くなる。それで、ノートに毎日のニュースから、死んだ人が発生した事件と死者の数を拾い出し書き留める。

 そして、人との関わりを徹底的に避け、生きることには役立たない数学の勉強、研究に逃げ込む。友達はたった一人で名前はミナ。大事な友達なのだが、このミナはLGBT。

 アイの人生の転機となったのは、街でビラをもらい、そのビラに誘われ、安保法制反対のデモにでかけ、そこでカメラマンユウと知り合い、結婚してから。

 アイは自分の血を継ぐ子供が欲しいと強く思う。しかし、子供ができなくて、思い切って人工授精にかける。困難を克服して妊娠したが、11週めで流産。

 そんな失意の中、ロサンゼルスへ行っているミナと連絡をとると、驚くことにLGBTのミナは妊娠していると言う。しかも、相手はアイも知っている中学の同級生。

 アイはロスに飛ぶ。ミナから子供を産むということを聞き、心から喜ぶ。
子どもは、親に会う前にできる。親はその後で子供にであう。できた奇跡にありがとうと言いたい。

 日本にも貧困子どもの問題がある。しかし、存在はよくわからない。貧困は、存在が認められず無視されている。世界は移民、難民を排斥する風潮が席巻している。

 しかし、人間は生まれてきてくれたことに感謝しあい、そして生きてゆくことに理解しあわねばならない。

 それからLGBTの人が妊娠したってかまわない。人間は多様であり揺れ動く。その多様性を受容せねばならない。
 他人の生き方考え方を認め尊敬しあえる世界にせねばならないと作品は訴える。

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| 古本読書日記 | 06:27 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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