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桂望美    「総選挙ホテル」(角川文庫)

 大学で28年間社会心理学を学び、研究し教えてきた元山。現実の社会での実践が不足しているため、空理空論ばかりで、社会で応用できるものではないと評価されてしまっている。そんな元山に、中堅ホテルだが、業績が落ちて、厳しい経営状態にある、 

 フィデルホテルの社長にならないかとのオファーがあり、元山はそれを受ける。

 元山がくりだした改革が破天荒だった。

  各部門の定員数を決め、それからあぶれた人は解雇する。その定員をだれにするかは、従業員による投票の評点で決める。ただし、所属部門では活躍できないが、他部門にゆけば活躍できるという人選も従業員が決め、その評点の高い人は、他部門への移籍ができる。

 その結果、料理部門の人がベルボーイになったり、フラワーショップ担当の人が、レセプションになったり、派遣の清掃の人が、ウェディング担当になったりする。

 また、管理職も従業員の投票で決める。
こんなことをやると、自分は解雇されたくないと思い、他の従業員に評価を高くしてくれるよう活動する人がたくさんでてくる。

 結果、解雇された人たちの恨みつらみがネットで発信され、その悪い反響に襲われたが、そんな文句も次第に収まり、ホテル内は活性化され、勢いをとりもどしてゆく。

 元山は次に、ホテルにはりめぐらされている監視カメラの映像をつかい、それぞれの従業員のサービスの質をみんなで評価しあい、その評価の高かった人に賞金をだすという活動をする。それで、更に社内は活性化し、ホテルはよみがえる。

 著者の桂さんは、会社に足場があるわけではない。これはファンタジーな非現実な世界を描いた小説だ。こんな人事組織対応をすれば、会社は混乱を引き起こし、収拾不能になる。

 日頃、組織、人事に大きな不満を持っている人は、この作品を読むと一時的には痛快になるかもしれないが、それを過ぎると虚しさだけが沸き上がってくるだろう。

 しかし、掃除夫だったおばさんの、就職志願者に贈る言葉はその通りと思わず頷く。
「どんな仕事でもキラキラしているものではないのよ。しんどい仕事ばっかりよ。しんどいから仕事になるのさ。あまり期待しないことだね、自分の未来に。だけど、そんなに悲観する必要もなくてね。地味な生活の中にも、笑ったり、嬉しいことがあったりするものなのよ。予想もしない展開になったりするものなのよ。ごくたまにだけど、平凡な毎日にだって、数えきれないほど幸な種がある。」

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| 古本読書日記 | 06:14 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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