FC2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

歌野昌午   「Dの殺人事件、まことに恐ろしきは」(角川文庫)

 江戸川乱歩の名作を、現代の時代に移し変え、再作成した作品集。

これらの作品を読むと、乱歩の原作では無理なトリックを使っていて、思わずありえないと思ってしまうのだが、現在当たり前になっているテクノロジーを使うと、トリックが現実的なものに変わる。科学の急速な進歩を思わざるを得ない、

 引きこもり状態にある女性が、母親により死んでいるのが発見される。首をしめられ窒息死。しかも裸で上半身の背中は蚯蚓腫れをしている。鞭かなにかで叩かれ、その後首を絞められたと思われる。

 ところが殺された部屋は、密室状態で誰も侵入できない状況。

 現代には、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)という装置がある。3Dより更に進化したこの装置を眼に装着すると、ディスプレイに映し出される情景が、上下四方切れることがなく、全部つながってみえるようになる。

 こうなれば、テレビも客観的ではなくなり、まったく自分もその画面の中にリアルに存在する状態になる。例えば、銃に撃たれると、よけようとするし、それに失敗すると本当に撃たれてしまった状態になる。リアルの世界では、ひとりで背中を鞭打つことは不可能だが、HMDでは実際に打たれている状態になり、そのことにより蚯蚓腫れが発生することになるのだ。

 このHMDをSEX場面に加え、例えばクッションのようなデバイスを体の上にのせると、異性とだきあっている状態が再現できる。そのデバイスに双方向のセンサーが仕込まれていれば、人肌のぬくもりが伝わってくるだけでなく、デバイスをなでるだけで、髪や肌をなでた感触がフィードバックされる。

 首に血圧測定器のようなデバイスで腕帯のようなものを巻き付けて、画面の絞殺にあわせて、測定器の圧力を強めれば、首絞め殺しが再現できる。

 何だか大変な時代になってしまったとため息がでる。
 推理作家は猫も杓子も密室殺人のトリック創造に力を注いできた。その多大な努力がこんな装置が登場するとむなしくみえてきた。

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ


| 古本読書日記 | 06:33 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT














PREV | PAGE-SELECT | NEXT