FC2ブログ

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

司馬遼太郎   「坂の上の雲五」(文春文庫)

戦争物や歴史物を読んでいて時々いやになるのは、戦死者、犠牲者が無機質に何千人とか何万人とか書かれるところ。

 旅順奪取でロシアの頑強な堡塁、要塞を攻める。そのとき、乃木、伊地知は銃をもたせた兵隊を、要塞に向かって突撃させる戦術を繰り返す。それは、待ち構えているロシア部隊から攻撃を受け蹴散らされ射殺されるだけのための突撃。

 それでも、日本の兵隊の死をいとわない突撃が成功してロシアの要塞を奪還したことがある。1000人で突撃して、奪還したときの人数は100人である。

 乃木、伊地知のひどいのは、どうせ皆殺しにあうだろうと考えて、奪還したらどうするかを全く考えていなかったことだ。

 100人は、応援、支援もなく孤立したまま、残され、翌日ロシア軍によって全員殺される。

旅順攻防で、ロシアの投入した戦闘員は4万5千人。うち死傷者は1万8千に余。亡くなった戦闘員は3千人。これにたいし日本は兵力十万人。うち死傷者は6万百十二人。うち戦死者は一万五千四百人。そのうち将校はたった十人。

 突撃隊で突っ込む歩兵がまっさきに犠牲者となる。
この歩兵はそれぞれが人間であり、家族を持ち、日本に変えれば、平穏に暮らしていける人たちである。

 感情的になってしまうが、たとえ戦争で勝利をしても、多くの人を犠牲にする、そこに何の価値があるのだろうと考えてしまう。
 しかも戦死を生じさせる将校たちは、犠牲者が圧倒的に少ない。

旅順には、統合参謀長の児玉源太郎が乗り込んできて、乃木の指揮権をはく奪して、みずから指揮をとる。日本独自で開発した二十八サンチ砲をもちこみ、203高地を奪取する。

 児玉が乗り込んできたときの怒りの言葉が心にしみる。
 「この連中が人を殺してきたのだ」
「陛下の赤子を、無為無能の作戦によっていたずらに死なせてきたのはたれか。これ以上、兵の命を無益にうしなわせぬよう、わしは作戦転換を望んでいるのだ。」

ランキングに参加しています。
ぽちっと応援していただければ幸いです。
にほんブログ村 本ブログ 読書日記へ



| 古本読書日記 | 06:17 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT














PREV | PAGE-SELECT | NEXT