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薬丸岳    「友罪」(集英社文庫)

 この作品で扱う問題はどんなに突き詰めても解決されるようなものではない。しかし、その問題にむかう、薬丸のきりもむノミの鋭さ、深い情熱の凄さはただ事ではない。どうしてここまで真剣に追及するのだろう。読んでいて、圧迫され、何度も押しつぶされそうになる。

 主人公の益田は、同じ日に転校してきた桜井が厳しい苛めにあっているので、いつもそばにいて、支えてあげていた。桜井は益田を唯一の友達だと思い、めげずに頑張っていた。そのクラスで葬式ごっこがおきる。色紙に最後の別れの言葉をクラス全員で書いて桜井に渡す。全員が書くから益田も何か書かねばならない。益田は「じゃあね」と色紙に書く。

 桜井は益田に悲痛な思いで電話をする。「もう僕は限界。死ぬしかない。」。益田は冷ややかに答える「勝手にすれば」と。そして桜井は自殺する。

益田はそれからずっと苦しむ。「桜井を殺したのは自分だ」と。

 その益田がホームレスのような生活から脱するために入社した工場に、同じ時、鈴木という青年も入社してくる。2人は友達となるが、鈴木が実は益田が小学校時代、家の近くで起きた小学生殺害事件「黒蛇神事件」の犯人だったことを益田が知る。この事件では2人の小学生が殺されたのだが、眼球をくりぬかれていたりして、その凄惨さで全国で大騒ぎとなった。

 工場で唯一の事務員である藤沢美代子は、俳優を目指していたが、プロダクションにだまされ若い頃AV女優にされてしまう。その時恋人だった達也から無修正の彼女のビデオをおくりつけられ脅迫されていた。達也は、ビデオを工場の社長や社員に送り付ける。

 タクシー運転手だった山内の息子が交通事故を起こし、2人の子どもを死なせてしまう。山内は弱り切り、自らの家族を解散してしまう。

 こんな重すぎる罪や失敗を背負う人たちが重なり合い物語は、重く深く進む。

こんな問題は」解決しようがない。だから重苦しさのまま最後まで至り、物語は閉じる。辛く切ない。しかし、最後の益田から鈴木への、薬丸が渾身の力を振り絞って表現した手紙は、力強くずっと心に響く。

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| 古本読書日記 | 06:18 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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