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彩瀬まる   「朝が来るまでそばにいる」(新潮文庫)

 文章が透き通っているから、本当は怖い話なのに、美しいホラーになっている6篇を収録した作品集。

気が弱いのか、気に入れられたいのか、主人公はいつも他人と話すときにちょっとした嘘をついて他人の関心を得ようとする。

 クラブ活動が終わったとき、最後まで残っていた一年生の女の子がいた。主人公が校門をでると、一年生が憧れていた男の子が、別の女の子と短い会話をして別れたところに遭遇する。後からでてきた一年生の女の子に、言う。

 「さっき○○先輩に会ったよ。」「女の子と一緒だった」これで終わればどうということもなかったのかもしれないが、余計な嘘をつく。
 「腕を組んで二人で楽しそうに帰っていったよ。」

その夜、一年生の子はリストカットした手首の画像とともに、悲哀なメールを部全員に送った。そして、嘘がばれる。

 それから、主人公に話しかける生徒はいなくなり、それにつれ苛めにあうようになる。そして、お金をせびられるようになり、それができないと殴られ蹴られるが始まる。

 もうこれ以上は無理という状況になったとき、屋上のフェンスから後ろ向きに身を投げる。宙に舞いながら「嘘をつかなくても、誰にも負けずにすみますように」「ぶくぶく太った気持ちの悪い化け物が、二度と私の中にうまれませんように」と祈った。

 体は地面に打ち付けられ、スクランブルエッグのようになる。これで嫌な現実からおさらばと思ったら、気がつくと化け物になって学校の中を彷徨いはじめていた。

 学校には、自分と同じような化け物が他に3人、それに主人公と同じような目に遭ったことがある、化け物の姿が見える汝教師がいた。

 死ぬということはどういうことなのかわからないが、主人公は消えてなくなりたいのだが、化け物の元生徒たちと一緒に、学校に棲みつく。

 何と妹が娘を連れて卒業式にきたときも、まだ主人公は学校にいる。

長い時間かけると、目がなくなり、口や耳もなくなり顔がのっぺらぼうになり、だんだん消えてゆく。ところが、誤って学校の生徒を階段から押し倒したりして、その生徒がけがをすると、消えた目や口がまた復活する。

 ねっとりと終わりなきホラーが続く。人生の中で、失敗したことが、いつまでも心に憑依して、死ぬまでその人を悩み苦しめる。そんなことがじーんと心にしみこんでくるのが最後に収録されている紹介した「かいぶつの名前」という作品だ。

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| 古本読書日記 | 06:23 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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