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奥田英郎   「variety」(講談社文庫)

 短編の間に、イッセー尾形、山田太一との対談がはいっているバラエティー集。

奥田は最初の一行目をひねりだすのに大きな苦労をする。しかし、それが決まると、後は自動的に言葉や文章ができる。テーマとか構想はあまり考えない。そうは言っても最後の文章は決めていて、それにむかって一気に突き進むのだろう。

 所収されている短編も名作ぞろいなのだが、私には山田太一との対談が印象に残る。

山田太一の脚本は、哀しさや苦しさを描いても、そこに決して深く立ち入ったり、責め上げたりしない。あるいは、言葉を断定的にしない。「~、なんちゃってね」とか「それ。ほんとかよ」みたいに最後に加える。

 テーマを描くのではなくディティールを描く。ドラマには関係ないが、日常的にいつもおこっていることを掬いだし描く。

 ファミレスでウェイトレスと客とのやりとり。客が差し出された料理に「ありがとう」と言うようなところ。

 それから、演劇では長いせりふをしゃべるが、日常ではそんなことはない。相手が「それで」「なんなの」「なるほど」とか途中で言葉をさしはさむ。

 視聴者は今そこにある日常をみているように思ってしまう。

山田の眼は、夢だ生きがいだと口角泡をとばして力の限りしゃべり行動することに肯定的にとらえない。次に紹介する言葉がその通りと、人生終わりが近くなっている私をうなずかせる。

 「過剰に生きがいを求めることに疑問を感じるんです。水害がいちどあればとたんに何年も続くダメージを食らうように、文明社会ある面で実に無力です。
 精子卵子の段階から、人として生まれて、次々に降りかかる難問を切り抜け切り抜けして三十代四十代になっていくことはそれだけでもすごいことなのに、なおかつ生きがいなんて言う。」

 等身大の人々を描いたら山田太一にまさる人はいないと心底思う。

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| 古本読書日記 | 06:07 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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