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又吉直樹      「劇場」(新潮文庫)

私は田舎の地方都市に住んでいる。20年前から朝4時に起きて、2匹の犬を連れて散歩をする。流石に田舎では4時に起きている人は、工場勤めの外国人労働者かコンビニの店員くらいしかいない。丹念に調べれば、引きこもりで完全に夜型人間になっていて朝4時には起きている人もいるかもしれないが。

 しかし東京は夜型人間を吸収する余地がある。この作品、年寄りの僻み読みかもしれないが、主人公の永田、劇団の脚本家という仕事の前に、朝起きて活動するということができなくて、夜ふらふら活動するという気質が前提でできあがっている。

 専門学校の学生だった沙希は、永田の劇団で女優をしていたが、学校を卒業すると、昼は社員として衣料販売会社で働き、夜は居酒屋で働くようになる。

 昼活動する世界でできる人間関係それに創られる思考と夜のそれとは大きく異なる。夜はどうしても妄想が膨らむ。それを、永田は沙希に居丈高にしゃべる。沙希は、永田が頭がよくて自分の知らないことを何でも知っていると尊敬し、膨らんだ妄想を周囲にも話すと、周囲からも尊敬の目でみられる。その尊敬が愛になり、ずっと永田といたいと思う様になる。

 しかし、生活パターンによる2人の乖離はどんどん拡大する。このままでは沙希が可哀想だから、別れたほうがよいと読者は思うが、沙希は何と、社員もやめ居酒屋のバイトもやめる。そして、引きこもりになり、酒にひたる毎日となる。

 しかし、夜型になると、生活資金が手にはいらなくなる。

 結局、沙希は田舎に帰る決断をする。田舎で近くの会社にはいる。

アパートに残した荷物を自宅に配送するため沙希が東京にでてくる。そこで永田とデートをする。昼あちこちに2人は行ったはずなのだが、そこの記述は殆どなく、やっぱり夜そばを食べ酒が入っているときの記述が長い。永田が言う。

 「沙希ちゃんは田舎に帰る。俺は演劇を続けて、飛躍的な成長をして、大金持ちになる。
そしたら、ふぐの薄つくりをさらっと全部つかんで一口で食べる。沙希ちゃんはウニが好きだからどんぶり一杯のウニを食べる。温泉旅行もいっぱいするし、海外のテーマパークにも行く。バルコニーのある大きな家に住んで、大きな犬も飼う。庭には季節の花をいっぱい咲かせよう。CDも小説も雑誌もDVDも何でも買いたい放題。」

沙希が「ごめんね」と言う。
「ゴメンなんて答えがちがうよ。俺は早く家に帰るの。誰からの誘いも断って、一番会いたい人に会いに帰るんだ。」

 最後は普通の人たちがしている生活を永田が夢のように語る。しかし、それはとても実現不能なこと。もちろん沙希は永田と別れる。
 一旦しみついた夜型生活は生涯変わらない。永田の行きつく先は暗い。

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| 古本読書日記 | 05:40 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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