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吉田篤弘    「おやすみ、東京」(ハルキ文庫)

 この物語は不思議な物語。登場人物がたくさんいる。その人物たちは、それぞれに悩み、希望、挫折などそれぞれの物語を持っている。だから、登場人物一人一人を主人公にして物語を紡ぐことができるのに、それを一つの物語の枠にはめて描いてる。

 だから、この人はどんな人だったけと常に思い返さないと、物語がわからなくなる。

共通しているのは、登場人物が行動し、働いているのが深夜から明け方にかけてと、行動の起点や終点になっているのが、全員ではないけれど、4人の女性がやっている「よつかど」という食堂と夜だけ開店している「イバラギ」という古道具屋。

 この「イバラギ」が面白い。壊れている物を仕入れたり、拾ってくる。中には、主人のイバラギが修理して売るものもあるが、殆どは壊れたまま。イバラギはそんな品物に自分が製品名をつけて販売する。

 イバラギは品物が壊れていることにうれしさを感じる。ようやく人間に従事することから解放されて品物が自由になるからである。
 「月光増幅器」「透明インクペン」「半分ハット」「温風マシンガン」「穏水保存容器」
などが店の販売品の名前。

 対になっている時計がある。一つはいつも15秒遅れ、一つはいつも15秒進んでいる。2つの時計を見ることにより今の時間をしる。これが吉田マジックの文章で読者になるほどと一瞬思わせる。しかし、しらふになると何これ?と思ってしまう。

 アヤノは食堂「よつかど」を他の3人と共同でやる前、一人で食堂を開いていた。そこに毎日やってきて一番安い「ハムエッグ定食」を注文する田代に恋心を抱く。

 近くにあった工場が閉鎖されると田代はやってこなくなった。それでも「よつかど」で働いていてもいつか田代にあってまた「ハムエッグ定食」を創ってあげたいと願っていた。

 そのアヤノが古道具屋の「イバラギ」にゆく。

イバラギが14枚の板をとりだす。これは階段の踏み板だとイバラギが言う。この踏み板に商品名をつけねばならないがいい名前が浮かばない。

 まとまった名前をつけるのではなく、踏み板一枚ずつに名前をつけましょう。と言って、これは13段目ですから「二階まであと二段」これは14段目ですから「二階まであと一段」という名前。

 アヤノはこの階段を踏みしめ二階に上がれば、そこには田代がいると信じる。それで「二階まであと一段」だけを500円で購入。そして食堂「よつかど」まで抱えてかえる。それは少し重い。

 階段の踏み板はどれも同じ。イバラギはこれが「二階まであと一段」と言ったが、一番下の「二階まであと14段」だったら2階にあがることはできない。どうしよう。そんなことを思うと踏み板がぐっと重くなる。

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| 古本読書日記 | 06:21 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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