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柚月祐子   「臨床真理」(角川文庫)

 柚月の長編第一作目。

臨床心理士になったばかりの主人公佐久間美帆が担当したのが、藤本司。藤本は知的障害者更生施設に入所していた。

 ある晩、同じ施設に入所していた彩という子が、手首を傷つけ、救急車で搬送される。彩は、救急車を呼んでから到着まで1時間以上かかり、救急車内で、亡くなってしまう。この時、救急車に同乗した司が、彩は自殺ではなく、殺害されたのだと騒ぎ、一緒に同乗していた施設長の安藤を切りつけけがをさせる。

 ここから、主人公の美帆が、同級生だった警察官の栗原とともに、事件の真相にせまり、どすぐろい真実をつきとめる。
 物語については読んで頂くとして、強く感じたことを記述する。

柚月さんは他の作品でもそうだが、当然起きるだろうということを、それは露骨すぎるから際どくかわしてということを一切せず、起きることは起きると描ききる。

 この作品で主人公の美帆が、亡くなった彩の遺品を施設の倉庫に忍び込み探す。そこに障碍者の少年が入ってくる。少年は下半身をさらけだし、美帆にせまる。一般の小説なら、ここで誰かが登場したり、何かが偶然に起こり、危機は回避されるのだが、この作品では、美帆は下半身の下着を力で脱がされ、丸出しになってしまう。男根を挿入しようとするのを、足で挟んで回避しようとする。そこで少年はたまらず暴発して強姦をやめる。

一般の小説では、主人公の若き女性がこんなことになることは無い。

 それから、真正面から障碍者の性の問題を扱っていることにも驚く。普通ではとてもテーマにはできない。実態を斜めには見ないで、真摯に向き合っている姿勢には感動する。

 それから、これは現実に存在することだそうだが、共感覚ということがテーマになっている。人間は言葉により、物事を認識するが、物語では共感覚能力のある人が登場。

共感覚は、人間の喋る言葉が、色に染まってみえる。白は真実を言っているが、赤だと嘘をついているという風に。
 おそらくこんな感覚を持っている人間は、数百万人に一人くらいだろう。だから殆どだれもが、そんな人がいるなどということの認識は無い。

 そんな時に、共感覚を持っている人間は、そのことを誰に言っても、信じてもらえず、気が狂ったとしか認識されない。はかりしれない奥深い苦悩の中での生活を強いられる。

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| 古本読書日記 | 06:13 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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