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司馬遼太郎    「歳月」(下)(講談社文庫)

 江藤新平は、政府から離れ、地元佐賀で反乱を起こす。しかし、たった5日間で維新政府軍に制圧される。そして、薩摩に行き西郷に反乱を促せばと佐賀から逃げ、西郷のところに行くが、西郷が拒否。更に土佐に行けば、土佐は立ち上がると思い、土佐に行くが拒否され、土佐を逃げ回っている間に、捕縛される。

 驚くことに、この捕縛に、維新政府で実質首相をしていた、大久保利通が、行政の仕事を休んで加わる。大久保と江藤は全く主義主張があわなかった。

 捕縛された江藤は大久保が滞在していた佐賀に連れ戻され裁判にかけられる。

大久保は法律を無視して、江藤を死刑に処そうとする。しかし、維新政府で大臣まで務めた江藤にそんな法を無視した刑を下す裁判官はいない。困った大久保は1000円(現在の金額で2000万円)を報奨金として用意して法を無視する裁判官を求める。これに河野敏鎌が応じた。河野は江藤を尊敬する一番の部下だった。

 さらにこの裁判の異常だったのは、江藤の取り調べは一切なく、調書は河野や大久保が作った。裁判開始時にはすでに死刑の判決ができていた。法廷で調書が提示され、その場で江藤は署名捺印させられた。

 しかも判決は、首切り、さらし首の刑。江戸時代には、そんなことも行われたが、明治になりこの刑は禁止され、法律上も存在しない。そこで、河野と大久保は、当時この刑が認められていた中国の法律を適用して刑を決めた。

 そして、本当は上級審への上訴ができたはずなのに、刑は判決の翌日に執行された。
大久保は事の経過を「大久保日記」にして残した。当然、その日記は後に公開されることはわかっていたはずなのに、嬉々として経過を綴った。

 最初に死刑がある。そのためには権力は無茶苦茶な理屈を持ってきて実行する。権力の恐ろしさをこの物語は教えてくれる。

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| 古本読書日記 | 07:05 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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