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下村敦史    「闇に香る嘘」(講談社文庫)

 作者下村敦史は2006年より4度江戸川乱歩賞の最終候補に残ったが、受賞はできず、この「闇に香る嘘」で受賞の栄冠を勝ち取っている。

 江戸川乱歩賞はすでに60数回の実績を誇っているが、受賞作品には、必ず選考委員より「ここを直したら」「ここの突っ込みが」等々注文がつくのが恒例。その注文がつかないすべての選者が満点をいれた作品が過去5作品ある。そのひとつが、この作品。これ以外に満点作品は薬丸岳の「天使のナイフ」などがある。

 この物語が素晴らしいのは、起きる事象について、180度視点を変えてみると、突然黒が白に変転、その鮮やかさが見事なことである。

 その変転により、起こった不可解な現象の、すべての謎が解かれ、回収されている。オセロが一手をおくことで、瞬時にすべての石の色が変わることと同じ。

 中国より戦争直後日本にたくさんの人たちが引き揚げてきたが、その途中で子供が行方不明になったり、子供をおいたまま逃げてきた人がいた。そのため、多くの子供たちが中国人に拾われ育てられた。

 中国に残された残留孤児の問題が1980年代に大きくなり、孤児の日本帰還事業が行われるようになる。

 当時はDNA鑑定の方法が無く、孤児と親たちが面会して、この子は自分の子だと言い、多少の物的証拠らしきものがあれば、日本人残留孤児として認められ、日本人となり、親のもとに引き取られた。
 日本が裕福であるということから、この帰還事業にのり、中国人が日本人として偽装し、日本へやってくる人も多くいた。

 物語は、主人公の兄が、残留孤児として日本にやってきて、実家で母親と暮らしているが、実は本当の兄ではないのではないかと兄の言動から疑い、そこから追及が始まる。

 しかも、追及する弟が、41歳で盲目となる。それゆえのスリラー感も味わえ、しかも見えないということが、ミステリーの仕掛けとして多く使われる。

 満州事変で、満州国を日本はうちたて、日本は多くの人を満州開拓団として送り込んだ。
その開拓団の土地は、開拓団が入植するまでは、中国人の土地。それを満州政府が略奪して開拓団に与えた。

 今まで裕福だった中国人が一夜にして貧乏になった。そんなある日、一人の中国人の女性が生まれたばかりの子を育てられないからと、井戸に放り込もうとする。それを目撃した開拓団の女性が、私が育てるからと懇願して、赤子をもらう。

 その赤子は、日本に連れていかれ、日本人として育てられる。彼自身は日本人と信じていたが、純粋な中国人だった。

 この真相が明らかになったとき、すべての事柄が見事にひっくりかえった。

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