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乃南アサ    「不発弾」(講談社文庫)

 短編集。本のタイトルにもなっている「不発弾」も面白かったが、「かくし味」がしゃれが効いていて面白かった。

 主人公の糸田は20代の後半。結婚生活が2年で破綻して、学生時代を過ごした街に帰ってきた。街はビルばかりになり、昔の面影はなくなっていた。その中に、通りを歩いていて、昔のままの木造の居酒屋「みの吉」をみつける。なつかしい気持ちになり、店にはいろうとするのだがいつも満員で入れたことがない。それでいて、「行列お断りの店」などという少し生意気な張り紙がなされている。

 行きつけのバーで聞くと、「みの吉」は古い店で、爺さんと婆さんが夫婦で切り盛りをしている。「煮込み」美味で有名な居酒屋とのこと。

 ある雨の日の夕方「みの吉」の前を通り過ぎると、ちょうどのれんをだすところ。流石にそのタイミングで入ると店は空いている。カウンターの奥の端の席に案内される。

 そこで、つまみに有名な「煮込み」を注文する。美味しい。何か秘訣のかくし味があるのではと爺さんに聞くが、それは無い。戦争直後に店を始めて50年以上、鍋は一回も洗っていなくて、汁は継ぎ足しでやっている。それで、特別の味がでているのではという。

 50年以上一回も洗っていないのかと糸田は少し気持ちが悪くなる。

10分もすると、店は満席となる。隣に座った客が、糸田の坐っている席は、 10年以上通っていた常連が坐っていた席だが、彼が突然亡くなり、昨日葬式だったという。
 死んだ人の席に婆さんは案内したのかとまた気分が少し落ち込む。

そうして、確認してみると、客の席は固定していて、亡くなった人がでると、そこに新しい客が据わるようになっているようだ。

 糸田が通いだして、一年もたたないうちに、病名は異なるが、3人の客が亡くなる。更に、数年で7人が亡くなる。老人もいるが、50代、40代の人もいる。
 そして、とうとう爺さんが、肺炎にかかり、数日寝込んだ後亡くなってしまう。

葬式の後、爺さんを懐かしんで、残りの汁をつかって婆さんが煮込みを作り、常連たちで食す。
 大いに飲んで食べて、煮込みも少なくなる。婆さんが最後の煮込みを掬うと、固い感触があり、石ころのようなものが現れる。鉛でできた地蔵だった。

 金属鉛は強い毒性がある。中毒になると全身疲労、貧血、便秘に始まり、やがて鉛疝痛という腹痛発作がでてくる。そして末梢神経麻痺になり、精神異常をきたし、亡くなってゆくとのこと。

 ちょっと洒落たホラー作品だった。

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| 古本読書日記 | 07:12 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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