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黒川博行    「蒼煌」(文春文庫)

 絵画の世界というのは、どんなに独創的で芸術的に高い絵を描いても、公募展を行う団体に所属していない画家は全くその世界からは無視される。それぞれの公募展での金賞は、その団体の理事長の縁者だったり、理事長にへつらっているコバンザメのような画家が描いた絵画に与えられることがしょっちゅうある。

 この団体の上に君臨するのが芸術院会員、その上が文化功労者、そして最高の地位が文化勲章受章者。芸術院会員は生涯会員で全員で27名。誰かが亡くなると、欠員補充ということで、芸術諸団体の理事により投票によって決められる。

 この物語は芸術院会員を手にいれようと争う、京都画家の重鎮室生と稲山が参謀である京都老舗画商、東京の政治画商、政治家とその秘書、選考会に影響力を持つ芸術家たちの魑魅魍魎な闘争を描いた作品。

 黒川は。絵画界の内幕を徹底的に調査、これにかっての佐川急便事件を絡めて、欲望と権力獲得に溺れた人々を見事に物語にして描いている。

 この作品を読んでいると、元来絵画の価値などまったくわからない私でも、巨匠といわれる人やその絵画が権力と地位によって作られたもので、全く絵画の評価とは無関係であるように思われ、巨匠の名がうさんくさく思えてくる。

 この物語でも、票獲得のために投票者に贈り物をとどける。だいたいカステラなどの箱の下部分に数百万円の札束をしのばせておく。

 あまり見込みのない投票者に、あいさつでカステラだけを贈る。帰りに投票者がズタズタに切り刻んだカステラを送り主に突っ返す。下部に忍ばせてある札束が無いので、カステラの中に忍ばせてあると思い、カステラを切り刻んだのである。

 それにしても、絵画収集はそんなに一般的ではないのに、絵画市場はどうして成り立つのか不思議。

 この作品では、そのからくりを明らかにしている。

絵画は贈収賄に使うのである。ゼネコンなど建設業者は、画商から絵画を買う。これをキックバックの物品として政治家に贈呈する。この時に政治家にこの絵画はどこの画商から仕入れたかをさりげなく教える。政治家は6か月くらい絵画を飾り、その後画商に返品する。
 すると画商から数千万円のお金が政治家に贈られる。

絵画界、画商というのも、このサークルがあるから商売が成立しているのかもしれない。

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