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アンソロジー  「君と過ごす季節」(ポプラ文庫)

 春から夏にかけ、季節の香りを漂わせて、移り行く風景を背景に今をときめく12人の作家がつむぐ短編集。

 中島たい子さんの「大暑」がよかった。

主人公は、昨日、恋人に今日会おうと電話したが、うまくタイミングが合わず、会えないことになった。今日こそ大切なことを思い切って言うつもりだったのに、肩透かしを食らったと思ったが、今日は酷暑。こんな日に会わなくてよかったと思う。

 洗濯をして、部屋を片付け、酷暑の中、散歩にでかける。

道々彼女のことを考える。

 3年前、温泉旅行に行った。それが最後の旅行と主人公と彼女はわかっていての旅行だった。そして別れた。
 20代の2人の恋は激しく揺れた。主人公の部屋に泊まれば翌日の夕方まで2人は抱き合い過ごした。

 そして2人は5か月前に再会した。今度こそ20代の頃の失敗はしてはいけないと慎重に付き合いはじめた。

 彼女が部屋にやってきても、その日のうちに彼女は帰っていった。

誕生日にプレゼントをあげる。20代のころは、自分で選んでプレゼントをあげたが、彼女は「ありがとう」とは言うものの、うれしそうではない時がしばしばあった。今は「何が欲しい?」と聞いてからプレゼントを選ぶ。

 30代になった2人は、ダンスのような恋をしている。彼女が一歩下がると主人公が一歩前へでる。主人公が横に一歩逃げれば、彼女が一歩主人公に寄る。互いの気持ちが手にとるようにわかるから、負担にならず、むしろ相手の気持ちを楽しんでいる。

 そして今日は、大切なことを言わねばならない。主人公は彼女が勤めている画廊に行こうと決意した。

 そんな時、彼女から電話がある。彼女が言う。
「今日は残念だったね。でも、何とかして明日になってもいいから会えないかと思っていた。」」
 主人公は思わず自分もと思った。
「でも、いいわ。あなたがいなくても、ずっとあなたのことを考えていた。あなたと一緒だったから。会っていなかった時も、ずっとあなたと会っていた。」

 主人公は幸一杯になり、言う。
「愛している」
小さな声だが」受話器を通して聞こえてくる。
「愛している」と。

それにしても、今日は2人にとっても、人々にとってもアツイ日だった。

大人になったぶん、今度の恋はうまくいきそうな、いややっぱしそうでもないかもと読んでる私の心も少し揺れた。

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| 古本読書日記 | 06:31 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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