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黒川博行    「破門」(角川文庫)

 建設コンサルタントをしている二宮。現実の仕事はやくざの妨害を別のやくざをつかってさばくこと。この仕事の中で知り合った暴力団二蝶会に所属する桑原。この桑原が、金の匂いをかぎつけると、そこに食らいつきいろんなトラブルを起こすのだが、その処理や対応に二宮をパシリのように使う。二宮にとってはまさに桑原は「疫病神」の存在。

 作品はその「疫病神」シリーズ5作目。この作品で黒川は直木賞を受賞している。

本作品は、映画プロデュサーの小清水が映画作りを企画、そのために資金集め映画をする。そこに二蝶会と、親筋の滝沢組が出資をする。

 ところがこの資金を小清水が持ったまま失踪。小清水を追跡、金の奪取と、更に小清水とお金をめぐって二蝶会と滝沢組が反目。この2つのトラブルに桑原とひきずりこまれた二宮が対峙し、迷走、時に快走する。

 この作品は560ページを超えるが、読者に一気に読ませる。もちろん、物語の面白さもあるのだが、読んでいて不思議なことに気付く。

 基本的には二宮視点で描かれる。普通の物語では、一つの事象が語られると、「そのころ」別のところではとの表現を用いたりして、空間を飛ばして、同時に起きている事象を書いたり、別の人間の視点で物語を描き、起きる事象をパラレルに走らしたり、複合的視点で語らせ、物語を膨らませることが多い。

 また、過去に物語が飛び、現在起きている背景を説明する手法も多く行われる。

 しかし、この物語は、二宮視点で、一直線に刻々と現在だけが動き物語が進行する。だから、読みやすく、わかりやすく、スピード感もでる。

 それから、二宮、桑原の人物造形がすばらしい。リアリティを持った現実に存在する人間として登場する。
 時にエンターテイメントと言っても、主人公が撃たれても奇跡がおき、傷つかないようなことがしばしば起こり、それはありえないと読者を失望させる。

 ところが、この作品は、そういった作為が全くといっていいほど無い。登場人物がその個性のありようのままにしゃべり、行動し、違和感を全く感じさせない。

 それから何といっても、会話が秀逸。黒川は会話はすべて一旦書いた後、実際に声をだしてしゃべってみるそうだ。そして納得いくまで修正するほど会話にこだわる。

 桑原が居ない木下についてセツオにどうしたのか聞く。
セツオが答える。
 「弁当でも買いにいってるんじゃないですか。」
 「お前の頭は食うことだけやのう」
 「食う、寝る、勃つ。本能やないですか。」

 こんな面白い会話が満載。見事なエンターテイメント小説である。

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