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桐野夏生    「猿の見る夢」(講談社文庫)

 主人公の薄井は59歳。大手の銀行に勤めていたが、財務のわかる人が欲しいという取引先の要請で中小の衣料品販売製造会社に出向する。この会社の創業者で現在の会長がやり手で、この会社をファストファッションの会社に変え大きく成長させ、現在は年商1000億円以上の会社までになっている。

 そして薄井は、中小企業の経理担当で終わるところだったが、現在は財務担当取締役にまでなった。

 この一年で何とか常務になろうと社内営業に全精力を傾けている。というのは取締役は60歳定年なのだが常務は65歳が定年となっているから。

 この薄井が小心者でケチ。その思考行動が普通の会社員を映してしている。ユーモア小説なのだが、読んでいてチクリと心が痛む。

 まず65歳まで会社にいたいという欲求。別にお金が欲しいのではなく、10年来の愛人との関係を続けたいというのが理由。定年で会社を辞め、家にいるようになると、愛人と逢うことができなくなる。会社にいれば、仕事で遅くなるとか、休日には会社の店舗回りと嘘をついて、愛人と逢える。会社勤めが終わると口実が作れない。

 59歳だから、老後のことも考える。まず実家の遺産。実家は裕福な家で200坪の土地に2軒の家を荻窪に持っている。実家の一軒は妹家族が住み、もう一軒は母親が住んでいたが、痴ほう症になり、今は療養型病院に入っている。

 ここの土地が妹と折半しても1億円は固い。
更に自宅マンション、まだローンは残っているが所有している。それに預金が3000万円。
贅沢をしなければ、これに年金があれば死ぬまで暮らせるだろうと考えている。

 事態が変わり、坂を転げ落ちるようになったのは、母親が亡くなりその葬儀に愛人がやってきたことから。

 当然妻からは三行半を突き付けられ離婚を宣言される。すべての責任は薄井にあるから、マンションは取られ、大きな金額の慰謝料が取られ、年金の半分は妻に渡すことが約束させられる。

 さらに200坪の土地は、母親が土地を担保にして銀行から借り入れをして老後の資金にしていた。残り100坪は、母親の世話をしていた妹に感謝した母親が遺書を残し、土地や遺産はすべて妹に渡すことになっていた。これを、実家を家探しした薄井が発見しその場で破棄したが、結果遺産相続がどうなったかは物語では書かれていない。

 一方会社は、会長が大腸ガンにかかり余命幾ばくもない状態になり、社長の娘婿は、混浴遊びをしていて、その遊びを写真にとられ脅迫される事態に陥り、会長は会社を流通大手チェーンに身売りを決意。薄井は仕事が無くなり、高齢にして冷たい風の吹く世間に無情にも放り出されることになった。

  面白いと思ったのは、社員は、会社の恥部を口止めをさせられるが、会社と関係ない友人には、面白話として気楽に喋ってしまうところ。それが、ネットで流され脅迫のネタとなる。

 この作品週刊誌の連載小説。スピード感があり、軽く楽しく読むことができるように工夫されている。
 セクハラもパワハラもする人のことをセパ両リーグということをこの作品で知った。

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| 古本読書日記 | 06:38 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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