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貫井徳郎   「私に似た人」(朝日文庫)

 現在の日本の国の構造、富裕層と貧困層の2極化。あるいは、助け合ったり、支えあったりする共助の慣習の希薄化など、日本の抱えている重い課題と実態を10人の人間を登場させ、その行動を描写して問題を提示している。

 但し、それぞれが独立した物語にはなっていなくて、10人の話の関連が提示され最後には一つの結末に収斂されてゆく。

 物語には2つの流れがある。

一つは、ワーキングプアという社会から見放された層の人たちが、ネットでトベというハンドルネームの人に、彼らが貧困状態になっている原因は社会に責任がある。その社会に対しレジスタントとなり無差別に自爆テロを起こせとそそのかされ、その結果、各所で小口テロという自爆テロが頻発する。このトベなる人間、公安の捜査で明らかにされ逮捕されるが、その後第2、第3のトベが登場する。

 もう一つ。いくらテロを起こしても、社会は無関心で、社会変革のうねりとならないこと。

二宮麻衣子は、通勤途上でコンビニに車で突っ込む自爆、小口テロに遭遇する。この時、殆どの人が、多数のケガ人を助けるのでなく傍観する。中には現場をスマホで撮影する人も多くいる。

 そんな中、一人の男性が現場に飛び込み懸命に救助、手当をする。麻衣子はこの男に引っ張られ救助の手伝いや、近くの病院に医師を呼びに行く。何とか救急車を呼び、ケガ人全員病院に搬送される。

 麻衣子は救助に尽くした男性が、驚くことに自分の会社に勤めていることを知る。この男性、口汚く、傲慢なため、会社ではみんなの嫌われものであだ名がヘイトと呼ばれている。

 麻衣子は彼の体を張っての行動に感動して、この嫌われ者を飲みに誘う。恋愛とは言えないが、信頼できる人としてヘイトとお付き合いをしだす。そして、麻衣子も変わり者と言われるようになってゆく。

 そのヘイトは喘息もち。ある日漫画喫茶で発作がおこり、倒れるのだが、店員も客も彼を無視し、助けようとしない。そして、ヘイトは死んでしまう。
 これで、麻衣子は生き方を180度変える。このことが、物語の最後で一つにまとまってゆく。

 それにしても、貫井の物語通りなら、日本は小口テロが頻発せねばならない状況だが、テロは生じていない。プアとされていても、暮らすという行為は、破壊されていないからだろう。夢や希望は持てる状態では無いが、最低限暮らしてゆければ、テロには行動は向かわない。

 面白いと思ったのは、ネットによって生じる破壊は、組織化集団化されない。それと、小口テロは発生しても、直後は大騒ぎになるが、それが過ぎると誰もが関心が無くなるところ。

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| 古本読書日記 | 06:08 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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