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アンソロジー   「あなたに謎と幸福を」(PHP文芸文庫)

 ミステリーで謎解きが終わると、気持ちが暖かく、幸福が広がるハートフルな短編集。
殆どの作品が、すでに文庫化され出版されているので、既読作品が多くあった。

 近藤史恵と言えばロードレーサーを主人公にしている「サクリファイス」シリーズと下町の小さなフレンチ・レストランを舞台にした「ビストロ・パ・マル」シリーズが有名である。

 この短編集に収録されている「割り切れないチョコレート」は「ビストロ・パ・マル」シリーズの短編である。

 ある日の「ビストロ・パ・マル」。店はほぼ満員。その中で、男女ペアの客が不穏な雰囲気になっている。男性の態度が傲岸不遜で、相手の女性は泣いている。食事が終わって帰る際、その傲慢な男が「料理の味は素晴らしいが、最後のデザート、ボンボン・オ・ショコラの味は最悪。それまでの料理がすべて台無しになる。」とクレームをつける。シェフの三舟が食べてみると、確かに味はひどくなっていた。

 デザートのチョコレート菓子は、有名店から仕入れていた。調べると、この店都心のファッションビルに出店をした。そこでの家賃が高いので、原料のチョコレートの質を落としていたことがわかる。

 ある日、「ビストロ・パ・マル」の店員が雑誌をみていると、この前の傲慢な男性の写真が掲載されている。レストランの近くに「ノンブル・プルミエ」というチョコレート専門店がオープン。そのシェフオーナーでショコラティエが傲慢な男性鶴岡正だった。

 早速三舟は店の者にプルミエからショコラを購入してくるよう指示する。そのショコラは本当においしい。

 しかし変わっていて、店員は23個いりのチョコレート・マカロンを購入するが、一つ包みの数がすべて素数になっている。包みのデザインである数字もすべて素数。

 何日か後に、鶴岡に泣かされていた女性がレストランにやってくる。鶴岡もやってくることになっていたが、彼は現れない。

 事情を女性に尋ねると、鶴岡は女性の兄。ベルギーに菓子つくりの修行にゆき、帰ってきて店をだしたばかり。今、母親が危篤状態にある。しかし、鶴岡は店のオープンで忙しく全く母親の見舞いにやってこない。以前は、母親には一番優しく、気使いをしていたのに、人が変わってしまい冷たくなったと言う。

 三舟が推理する。そして、鶴岡はお母さんのことをちゃんと大切に思っているよ。素数は他の数字では割ることができない。必ず最後に余る。お母さんはいつもだされたお菓子を食べず、みんなが食べ終わって最後に余ったお菓子を頬張る。

 素数にしているのは、お母さんを懸命に思ってお菓子を作っているよという優しい思いが表われているのだと。

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| 古本読書日記 | 05:49 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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