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井上荒野     「だりや荘」(文春文庫)

 舞台はダリヤ荘という信州にあるペンション。そこは、椿、杏姉妹の両親が9年前から経営していた。両親は交通事故で亡くなってしまう。

 そして妹杏と夫となっている指圧師の迅人が都会暮らしをやめて、ダリヤ荘を引き継ぐために信州にやってきて、彼らを姉椿が迎えるところから物語は始まる。

 実は、椿は妹杏の夫迅人と関係を持っている。この物語は信州の高原が舞台となっていることにもあるのだが、静かな雰囲気で進む。しかし、静謐さに少し不気味さが漂う。それは、杏が、2人の関係を知っているのだが、そのことを内に抑えて振る舞うからだ。

 どきっとするのは、杏の何気ない言葉や仕草に、椿が杏が2人の関係を知っているのではと思うときだ。

 ダリヤ荘に一人旅をしている翼という若い男が泊りにきて、そのままバイトで働くことになり居つく。
 杏も翼も、迅人が椿と関係をしていることを知っていて、それが呼び水となって、2人は関係を持つ。

 そして、杏が翼と関係していることを姉の椿に言う。これで椿は妹杏の夫迅人との関係を杏が知っているのだと確信する。しかも、杏は8年前見合いで知り合った新渡戸とも付き合っていたのだが、その新渡戸が彼の義母と心中して死ぬ。

 杏は衝撃を受け、行きずりの男たちに体を与え、両親の亡くなった場所に行き死のうとする。

 一方翼は突然ダリヤ荘を辞め沖縄に行くと杏と迅人に申し出る。沖縄は口実で、椿と迅人が関係していること、それを杏が何も言わない、その関係に嫌気がさして、ダリヤ荘を辞めるのだ。

 何もばれてはおらず、うまくやっていると信じていた迅人。車の運転中に田舎のおばさんたちに声かけられる。
 「あら今日はおひとり。いつもの美人のお姉さんはどうしたの。」と。

 村では自分と椿のことが噂になっているんだとがっくりくる。

 あくまで静かな文章が、だんだん隠されていたと思い込んでいた暗い真実が明らかにされ、明るい現実が崩壊してゆく。クレッシェンドしてゆく過程が恐ろしい。

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