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加藤千恵   「アンバランス」(文春文庫)

 加藤さんと言えば、高校時代に創作した短歌を歌人枡野浩一感動して編集してベストセラーになった短歌集「ハッピーアイスクリーム」を思い出す。
 私も、この歌集を読んで、その飾らないストレートな作品に感動したひとりだ。こんなような作品が並ぶ。

まっピンクの
ペンで手紙を
書くからさ
冗談みたく
笑って読んで。

この作品もそんな加藤さんの特徴が発揮されている。

  主人公日奈子のところにある日突然、中年ででっぷり太りふやけた女性がやってくる。その女性は夫由紀雄と恋愛をしていて、何回もセックスしていると証拠の写真を投げつけ、別れてほしいという。

 いくら夫でも、こんな醜い女性と恋愛をするなんて信じられないと思うのだが、写真は夫が女性と関係のあることを示している。日奈子が変なことを聞く。夫とは何回抱き合ったのかと。女性は11回と答える。

 実は夫は不能だった。結婚前に一回、結婚してから一回。計二回しか夫とセックスをしていない。

 由紀雄によると、由紀雄は小学6年のときに、でっぷり太ったおばさんにセックスを強要され、それ以降中年の太ったおばさんにしか下半身が反応しなくなっていた。

 2回はできたこともあるし、何より日奈子は夫由紀雄を愛していたから、またチャンスはあると思い、ひたすら待っていた。自分とは2回しかセックスをしていないのに、こんな醜い太った女性と11回もセックスをしたことが悔しいし、許せない。

 そこで、日奈子はネットでホストをデリバリーするサイトを見つけ申し込む。面白いのは、すぐ2人があって関係を持つのではなく、会う日は10日後。その間互いにメールでやりとりをして関係をもってもよいか確かめあい、納得できたら会おうとするところ。

 そして10日後、指定されたホテルのロビーで2人は会う。

 ここからが、加藤さんの本領発揮。普通の小説だと、夫への後ろめたさが募り、行為がぎこちなくなり、後味もよくないものになる。

 ところが加藤さんの小説は、完全に男に溺れ、官能の波に漂い、日奈子は声を絶え間なくあげ、絶頂を迎えて果てる。その描写は実にストレートで小気味よい。

 そして、夫由紀雄が帰宅してくる。
家でくつろぐ夫に日奈子は迫る。
 「今ここでセックスしたい。本当はできるんでしょう。私たち夫婦なんだからセックスしないなんておかしいでしょう。」と。
 日奈子は夫由紀雄が大好きでたまらないんだね。

 このストレート感。短歌といっしょで強烈すぎ、たじたじとする。

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