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我孫子武丸    「裁く眼」(文春文庫)

 漫画家になりそこねた主人公の鉄雄。路上画家として、似顔絵を描いて暮らしていた。ある日浅草の路上で、別嬪女性と男性のカップルが通り、別嬪女性から似顔絵を描いてほしいとの依頼がある。15分ほどで描きあげ手渡すと、別嬪女性は「すばらしい」と感嘆するのだが、男がそれを見て、こんなひどい絵があるかと怒り狂い、絵を放り投げ、代金も払わず立ち去ってしまう。

 こんなエピソードがプロローグとして描かれる。何気なく読んで忘れていると、このエピソードがトリックを解く大事な場面となる。

 そんな鉄雄に、テレビ局より、裁判法廷の画を描いてほしいとの依頼がある。法廷画の対象となった事件は、佐藤美里亜という女性が、結婚詐欺をして、2人の男性から金品を取り上げた末に、結婚の約束を反故にしたために、男から恨まれ、それでにっちもさっちもいかなくなり、男たちに睡眠薬を飲ませ、風呂場に運び練炭自殺に装い殺人をしたという罪に問われている事件だった。

 佐藤美里亜は無罪を主張していた。更に美里亜が、鉄雄の法廷画が放送されたその日に家の前で何者かに石で殴られ倒れる。また、同じ法廷画を描いていた聖護院桜が殺害される。

 どうしてこんなことが起こるのか、鍵は最初に鉄雄の法廷画に描かれていた検察側に座っていた男にあった。その謎解きもなかなか面白い。

 この作品を読んでいると、本当に佐藤美里亜は意図をもって、男をだましたのか、そして男は美里亜にだまされたと恨み骨髄となっていたのか疑問が沸いてくる。

 男たちは、美人の美里亜に完全に心奪われ、恨むなんてことは無かっただろうし、すすんで金品を美里亜に贈呈していたのではと思えてくる。亡くなる前まで、男たちは美里亜を愛し、崇めていたのではと。

 世の中は外から見ていることと、実態は全く異なる場合がしばしばある。常識やマスコミに影響された見方ばかりしないように気をつけねばならないと思った。

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| 古本読書日記 | 06:41 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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