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村上春樹   「騎士団長殺し第2部遷ろうメタファー編下4」(新潮文庫)

 絵画界の大巨匠雨田具彦の作品「騎士団長殺し」は、主人公の私が具彦の息子政彦から借りた具彦の住居の屋根裏部屋に梱包され、置かれていた。

 それを紐解き、作品をみてから物語は始まり、私を巻き込んで色んなことが起こった。
絵画「騎士団長殺し」には4人が描かれていた。

ナイフで刺し殺された騎士団長。それから彼を刺し殺しているドン・ジョバンニ、そして口許に手をやって呆然としている美しい女性ドンナ・アンナ、それから左隅に、地面に開いた四角い穴から顔をのぞかせている不気味な「顔なが」。この4人が、物語ではイデア(観念)の象徴として登場してくる。

 この大長編のクライマックスは、すでに90歳を超えて、死の直前にあった巨匠雨田具彦を、主人公の私と具彦の息子政彦が、具彦が入院している伊豆の病院に、見舞いに行き、そこで政彦が緊急電話で呼び出され、病室を不在にしているときに、失踪した中学生の赤川まりえの居場所を突き止めようとする過程である。

 政彦が不在のとき、イデアである騎士団長が目の前に現れる。そして私に「騎士団長を殺せ。そうすれば、赤川まりえのいるところまで導かれる。」と言う。メタファー編で騎士団長が赤川まりえを救うためには、大量の血と犠牲者がいると言ったことはこのことを指す。

 そして主人公の私がドン・ジョバンニになり、騎士団長を刺し殺す。すると別のイデアである「顔なが」が登場して病室の端の床の蓋をあげ、そこに私を連れてゆき、この穴にはいり、そこから赤川まりえのところまで行けという。

 この穴から、幾多の大きな障害が立ちはだかり、この障害だらけの道や川や石の間を潜り抜け、私の庭にある祠の穴にたどり着くまでがクライマックスだ。

 この穴の道はイデアがいざなうメタファーの道。ということは、村上が得意とする非現実、異界の道なのである。

 村上の作品では、この異界を村上は読者の目の前で、縦横無尽な展開をさせるのがどの作品でも見事で、異界を描いているのではなく、現実に存在するのではないかと読者に思わせるのが際立っているのが村上作品の真骨頂だ。

 しかし、この作品での異界の場面描写は、いつもの村上と異なり、文章はゴツゴツして固く、むりやり見えない場面を作り描写しているように思えた。観念の世界を読んでいるように感じた。

 村上もうまく書けないと思ったのか、途上で登場するイデア、ドンナ・アンナを幼いころ主人公が亡くした妹のコミに切り替える。しかし、コミの悲劇が、殆ど物語で描かれていないので、少しも読者に響かない。

 しかも、これだけ苦戦したのに、赤川まりえを探し出せなかった。

 物語の最後ちかくで、私がスーパーに買い物に行く。レジ袋を断り5円得したと私が喜ぶ。天下の大作家村上にこんなことは描いてほしくないと思った。
 何だか村上が凡人に近付いてきたように思えた作品だった。村上は天才で大作家でいてほしい。

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