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井沢元彦   「忠臣蔵 元禄十五年の反逆」(新潮文庫)

 歴史の教科書にもでてくる江戸時代の書物「仮名手本忠臣蔵」。有名な元禄時代に起きた討ち入り事件の物語だと思っていたのだけど、この本で、舞台は南北朝時代で、悪役は高武蔵守師直、彼に散々バカにされた塩谷判官高定がついに堪忍袋の緒が切れて、殿中にも拘わらず、師直を切りつけるという物語になっていることを知り驚いた。

 よくよく考えてみると、殿中で起きた事件をそのまま物語にすると、幕府謀反ととられて発禁になるどころか作者は死刑となる。それで、舞台を変えて内容は忠臣蔵を想像できるような仕立てにして、出版した本なのだ。

 「忠臣蔵」には解けていない大きな謎がある。

一つは、浅野内匠頭が何故吉良上野介を殿中にて切りつけたのか。殿中で刀を抜くと、切腹、お家取り潰しになることは浅野内匠頭も知っていたはずなのに。その理由がわからない。

二つ目は、吉良上野介は切りつけられても、梶川与惣兵衛に浅野は取り押さえられ、吉良は軽傷で終わっている。浅野内匠頭は、即切腹が綱吉により決まり、翌日切腹する。
 吉良は殺されていない。浅野の死は、吉良によってなされたのではなく、綱吉の裁定によりなされている。この場合吉良を殺すことがどうして仇討となるのか。

三つ目は、討ち入りが成功したら、普通は全員が切腹するのに、なぜ幕府に自首したのか。

四つ目は、家老大石内蔵助は討ち入りまでに何故1年3か月もかかったのか。

 物語は主人公の劇作家、道家和彦と女子大生の柿内加奈、そして父の遺志を継いで、忠臣蔵を研究している羽田野京子により、謎の解明をする物語になっている。

 道家は作者井沢といってもいい。とにかく、膨大な資料を、3人は読み込み内容を検討する。

 ドラマの「忠臣蔵」では、吉良は性格も悪く、悪人となっているが、事実は全く違うことがわかる。吉良はその領地三河で、黄金堤を築いたといわれる治水事業、産業としての塩田事業を興し成功。領地を裕福な地に変革させ、圧倒的に名君としての評判を獲得している。
 人格も高潔で、尊敬を集めている。とても、浅野内匠頭を苛め抜くような人間とは違う。

 それで、3人は、浅野内匠頭について徹底的に調査する。

浅野内匠頭。殿中で刀を抜くことは、切腹、お家取り壊しになることは重々承知している。ところが、浅野内匠頭は切腹が裁定されても、その夜、大飯を食べ酒も飲む。全く動揺をみせない。この態度は3人には理解不能。そこで、精神科医を呼び、浅野について説明し、精神鑑定をしてもらう。

 精神科医は浅野は精神病を患っていたと断定する。突発的に激情し、理解不能の行動にでるのである。

 浅野の精神病は、家老の大石内蔵助だけが知っていた。だから、大石はお家断絶だけは避けたいと、幕府に嘆願書をだし続けた。実は、この事件以前に、殿中で殺人事件が起き、その犯人のお家は取り潰しになっていない。ここに大石は縋る。しかし、浅野が精神病であることは誰にも言えない。だから、堀部安兵衛など浪士たちは、なぜ大石内蔵助が討ち入りを決断しないで、京都で遊び狂っていることがわからない。

 幕府の裁定がどうやっても覆れないことを悟ったとき、大石は討ち入りを決断する。

実に興味深い内容である。「忠臣蔵」ドラマを観る目が変わりそうだ。

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| 古本読書日記 | 06:04 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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