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ドナルド・キーン  「思い出の作家たち」(新潮文庫)

 谷崎、三島、川端など5人の作家たちの交流とその作家についてキーンの評価が書かれている作品。

1968年、ノーベル文学賞に日本人で初めて川端康成が輝く。この作品を読むと、68年では日本人作家に賞を与えることが最初から決まっていたそうだ。

 当然三島由紀夫が最有力候補で、受賞が間違いないと思われていたが、蓋をあけると川端康成になっていた。

 三島は、受賞できなかったことをはかなみ、翌年自殺し、谷崎や三島など受賞すべき作家をさておいて受賞してしまった川端は、その重圧に耐え切れず自殺したとのうわさが当時まことしやかに流れていたとキーンは書く。

 川端ほど、現代の作家で不幸を背負っていた作家はいない。

川端は大阪の箕面で生まれた。三歳のとき両親を失う。その四年後に祖母が他界。さらに3年後に姉も亡くなり、体が不自由な祖父との2人暮らしとなる。

 数々の川端の名作はあるが、私は祖父が亡くなる前の一週間を描いた処女作「十六歳の日記」が今でもキーン同様印象が強い。このころの苦しい経験が、川端の他の作品にも強くにじみ出ているように思う。川端文学のまさに原点である。

 祖父が主人公の少年に小便をしたいと言う。しびんを持ってきてその入口に彼のペニスを入れてくれと祖父が頼む。

「はいったか。ええか、するで。大丈夫やな。」自分で自分の体の感じがないのか。
「ああ、ああ、痛た、いたたったあ、いたたった、あ、ああ」おしっこをする時に痛むのである。苦しい息も絶えそうな声とともに、しびんの底には谷川の清水の音。
「ああ、痛たたった。」堪えられないような声を聞きながら私は涙ぐむ。
 茶がわいたので飲ませる。番茶。いちいち介抱して飲ませる。骨立った顔。大方禿げた白髪の頭。わなわなとふるえる骨と皮との手。ごくごくと一飲みごとに動く、鶴首の喉ぼとけ。
茶三杯。

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| 古本読書日記 | 05:28 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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