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桜木紫乃     「裸の華」(集英社文庫)

 舞台上での事故で骨折したストリップダンサーの主人公ノリカ。引退を決意して、新たに札幌でダンスショーをメインとした店を開く。竜崎という、不動産会社の社員から紹介された2人のダンサーはノリカになつき、ノリカに憧れ素晴らしいダンサーになる。しかし、一人は画商の主人の子を身ごもり、もう一人は映画女優にスカウトされる。店が軌道にのってきたところで、閉店せねばならなくなる。

 多分、40歳は超えていると思われるノリカは、札幌を去りケガをした舞台に戻り、ストリッパーとして再出発を決意する。

 このノリカをストリップダンサーとして仕込み、一流ダンサーに育てのが彼女の師匠静佳。行方不明だったが、札幌の店のお客が居所を突き止め、ノリカに教える。

 ノリカは昔の舞台に帰る途中で、静佳に会う。
静佳は温泉で一人ストリップ小屋にいた。

 その舞台は不定休。お客が集まれば始まる。お客はいる気配はない。名前はオペラ座。もうやっていなかもしれないと思ったが、ベニヤ板に入場料3000円と書かれていたので、チケット売り場の小窓に3000円を持って差し出そうとする。誰もいそうにない。呼び鈴を振っても反応が無い。窓口をたたく。すると、窓にかかっていた布切れが揺れて、チケットがでてくる。それを購入して、ノリカはオペラ座のドアをあける。

 ここからの描写が素晴らしい。長くなるが付き合って欲しい。

「細い廊下を三歩進んで右に折れた。唐突に行き止まりになった廊下を挟み、『便所』と『劇場入り口』の紙が貼られた引き戸が向かい合っていた。視界のどこにも窓はなく、ひどいアンモニア臭が漂っている。ノリカは息をとめて、入り口のドアを開いた。今度は黴の匂いだ。
 ノリカが開けるのを待っていたかのように蛍光灯が瞬いた。畳3枚分の舞台を取り囲み、大人が10人も入ったらいっぱいになりそうな客席には座布団が等間隔に5枚並んでいた。
・・・・・

 客席の両側には数枚、日活ロマンポルノのポスターが貼ってあり、古い演歌歌手のサイン入り色紙や『オナニー禁止』『放尿、脱糞には罰金を頂きます』と言った注意書きもある。それらの紙はみな退色して角がめくれあがっていた。
 ・・・・(突然灯りが消え、舞台にスポットライトが灯る。赤が8つに青が4つ)

しばらくすると、舞台の下手の床に画用紙大のラジカセが滑りでる。細い女の手がプレイボタンを押す音が大きく響いた。ひとり小屋、ひとり舞台、客もひとりだ。スピーカーからエレキギターのイントロが飛び出す。ベンチャーズの「二人の銀座」だった。
・・・・
 裾捌きの緩急と見返りの際にみせる肩先の色気は紛れもなく師匠だが、すっかりやせ細り鶏がらそっくりになってしまっている。
・・・・

二曲目は「キャラバン」。
 赤い長襦袢の襟元がはだけると、そこだけぽっこりと膨らんだ原と垂れてしなびた乳房が見え隠れする。ノリカは目を逸らさぬように努めた。かぶり席で生身の女を見る者には、その体の歩んできた人生を見届ける責任がある。」

 緊張と息詰まる研ぎ澄まされた文章が続く。

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